「厳しすぎる販売ノルマ」を販売担当者に課した金融機関の悲惨な結果
この販売ノルマは実質的に達成が難しく、従業員は職に踏みとどまろうとするために不正行為を働くようになった。2009年から2016年にかけて、全米の同行の支店で働く何千人もの銀行員が偽のクレジットカードを注文し、不正な口座を開設し、既存顧客向けに無断で不要な保険商品を発行するといった行為を繰り返した。この不正行為が発覚したときには、偽の口座の数は350万件に達していた。最終的に、5300人の従業員が解雇された。
悪いのは銀行員?
この7年間の、同行の従業員の日常を想像できるだろうか? 朝、オフィスに到着し、コーヒーを飲みながらパソコンを立ち上げ……それから、せっせと偽の口座を作成し、不正行為をしていくのだ。このような環境では、一般的な従業員が不正に手を染めないでいるのは極めて難しいだろう。
なぜ従業員は不正行為を常態化させてしまったのだろう? それが、上司からのシグナルだったからだ。管理職は不正行為をそそのかし、時には擁護さえしていた。ウェルズ・ファーゴの倫理部門に不正行為の現状を告発したある従業員は、後に報復行為に遭ったと報告している。同行の公式なミッション・ステートメントでは倫理が重要であると述べられているが、インセンティブと、不正行為の告発に対する反発は、それとは逆のメッセージを送っていた。
この銀行が不正行為の発覚によって被ったコストは莫大なものである。その余波は、現在も続いている。最大のダメージは評判が失墜(しっつい)したことだった。ウェルズ・ファーゴは、まだ信頼回復の途上にある。今にして思えば、経営陣が件のインセンティブがもたらしうる悪影響についてもっと慎重であれば、すべての事態は回避できたかもしれないのだ。

















