負の感情は抱えたままでいい――漫画家・文筆家・画家ヤマザキマリが「失敗を恐れる時代」に伝えたいこと。挫折と「もうダメ」の、その先

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ヤマザキマリさん
(写真:『最後の講義 完全版 漫画家・文筆家・画家 ヤマザキマリ』より)
「あなたは今日が人生最後の日だとしたら何を伝えたいですか?」という問いに、各界のスペシャリストが熱い講義を行うNHK Eテレの人気番組「最後の講義」。2024年7月に放送され、大きな反響を呼んだのが『テルマエ・ロマエ』などの作品で知られ、ミラノ・コルティナオリンピック開会式の解説でも話題になったヤマザキマリさんの放送回でした。
ヤマザキさんの講義のテーマは「表現とは何か」。表現に関わる仕事をしている人とそれを目指している若者が聴講生として集まり、熱い議論が交わされました。同番組での未放映分を加え、新たに加筆した著書『最後の講義 完全版 漫画家・文筆家・画家 ヤマザキマリ』より一部を抜粋してご紹介します。
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たくさん挫折し、傷ついて自分だけの色彩を持つ

歌舞伎俳優の中村勘三郎(18代目)さんと交流がありました。彼は表現について「怒りや怨嗟(えんさ)や悲しみといったものがなければ、表現はできない」とおっしゃっていました。

要するに怒りや不満、不安、悲しみ、そういった負の感情が焚(た)きつけ材となって演技という表現に置き換えられる。かといって、そのエネルギーを使って演じる役柄は、恨みつらみが固まった悪代官とかそういうものばかりではなく、すごく明るいキャラだったり、おとぼけキャラだったりする場合もある。

どんな役柄でもうまく演じるためにも、重たかったりつらかったりする感情とたくさん向き合う必要があるということです。

今の若者は、動画や映画を見るときに2倍速にしたり、あらすじを先に知っておきたくなるそうですね。息子の友だちもそう。ネタバレになったらおもしろくないと言うと、ネタバレをしておいたほうが不安を抱えなくていいんだよと言われたそうです。

わかりますよ、予定調和じゃない動揺を避けたくなる気持ちは。でも、そうやって人間が本来つかさどっているはずのさまざまな感情を使わないままにしておくのはどうなんでしょうね。

ヤマザキマリさん
ヤマザキ マリ / 日本女子大学 国際文化学部国際文化学科 特別招聘教授、東京造形大学客員教授。1984年にイタリアに渡り、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。比較文学研究者のイタリア人との結婚を機にエジプト、シリア、ポルトガル、アメリカなどの国々に暮らす。2010年『テルマエ・ロマエ』でマンガ大賞2010受賞。2015年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。2024年『プリニウス』(とり・みきと共著)で第28回手塚治虫文化賞のマンガ大賞受賞。著書に『ヴィオラ母さん』『ムスコ物語』『歩きながら考える』『扉の向う側』『貧乏ピッツァ』など。現在、『続テルマエ・ロマエ』を集英社「少年ジャンプ+」で連載中(写真:ノザワヒロミチ撮影)
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