負の感情は抱えたままでいい――漫画家・文筆家・画家ヤマザキマリが「失敗を恐れる時代」に伝えたいこと。挫折と「もうダメ」の、その先

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そんなふうに見られることはありませんが、今でもしょっちゅう傷ついたり沈んだりしていますよ。

どうしようもないな、と思ったら今いる場所から離れる。これまで自分を取り巻いていた環境とはまったく違う価値観のところへ移動する。そうすると、さっきまで見ていた白黒の世界が急に極彩色になる。自分が抱えていた悩みもハナクソみたいに思えてくる。

地球のダイナミックさと向き合っていると、些末(さまつ)なことはどんどん忘れられますから。それこそショーペンハウエルが言っていた言葉を思い出したいですね。

ショーペンハウエル
ショーペンハウエル(ショーペンハウアー)  1788~1860年。ドイツの哲学者、厭世思想の代表者。主著は『意志と表象としての世界』『自然における意志について』など(写真:Ullstein bild/アフロ)

人間というのは忘れる美徳があるということ。私たちは普段、このマッチ箱みたいな小さな空間に慣れすぎてしまって、体育館くらいの部屋を1人で使っていいよと言われても戸惑うでしょう。寝るときも壁側に身を寄せてしまうはずです。

だけど、社会からしてみれば、大きな空間を動き回る人より、不安で壁に身を寄せている人たちのほうが扱いやすい。しょせん群性の生き物ですから、無防備な一匹狼として広い空間で彷徨うようには教育されてきていない。

旅へ出よう、視点を変えて新たな色を

でも、私たちは本来は移動性の動物であることを忘れてはなりません。SNSを賑わせている芸能スキャンダルも、たとえばアマゾンのヤノマミ族たちと一緒に暮らし始めたら、まったくどうでもいいことにしか思えなくなるでしょう。

アマゾンまで行く必要はありませんが、ほんの少し視点を変えるような場所に行くだけで全然変わります。温泉に入るだけでも違いますよ。まさに『テルマエ・ロマエ』のコンセプトですが、古代ローマ人がなぜ温泉を、浴場文化をそれほどまでに大事にしていたかというと、お風呂につかってリラックスすれば老廃物は払拭されることを知っていたからです。

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