負の感情は抱えたままでいい――漫画家・文筆家・画家ヤマザキマリが「失敗を恐れる時代」に伝えたいこと。挫折と「もうダメ」の、その先

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元老院たちも会議室でまとまらない話が、場所を変えてお風呂に入ったとたん、案件がうまくまとまる。本当に必要ではないことは考えないようにさせてくれる効果が入浴にはあると思います。

私たちはなぜ負の感情をここまで避けて生きようとするのでしょう。そもそも負の感情というのは何なのか。人間には、そもそも落ち込んで沈んでも起き上がりこぼしみたいに立ち上がれるスキルが備わっているはずなんです。そうじゃないと、ここまで遺伝子は継続してませんから。たとえば、もし何か嫌なことがあって落ち込んでいるとするじゃないですか。

でも、緊急地震速報が鳴って、すぐ避難してくださいという指示があったら、たちまちそのとおりにするでしょう? 大地震の中で、落ち込み続ける人なんていませんよ。そういうものなんです、本能はたくましくできているんです。

「もう、私ダメ」という感覚をさんざん感じて

ですから、みなさんは楽観して堂々と大手を振って落ち込むなり、失望するなり、傷つくなり、失恋するなり、「もう、私ダメ」という感覚をさんざん感じてみてください。表現で生きていきたいと思うみなさんにとっては、そういった感覚の経験は必須ですよ。

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とはいえ、精神のゆとりは、しょせん世の中が裕福だからこそ向き合えるもの、と思う人もいるでしょう。実際、バブルの時代はお金があるのに、わざわざバックパッカーなどサバイバル的旅行をする人たちがいました。

経済的なゆとりが精神的な振り幅を広げていたところはあると思いますが、停電になっても自家発電できるように、人間もお金に依存しなくても想像力や知力でいくらでも質感のある生き方をプロデュースできるはずです。

私も貧乏経験は長く、確かにつらい日々ではありましたけど、それはあとで自分を支え続けてくれるブレない自信に変化します。自信というのは、決してお金では買えないものですから。

【あわせて読む】「ルーヴル美術館でモナリザを見てきて」——14歳の娘をヨーロッパ1人旅へ行かせた母の教育。漫画家・文筆家・画家ヤマザキマリの原点
ヤマザキ マリ 漫画家・文筆家・画家

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やまざき まり / Mari Yamazaki

日本女子大学 国際文化学部国際文化学科 特別招聘教授、東京造形大学客員教授。

1984年にイタリアに渡り、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。比較文学研究者のイタリア人との結婚を機にエジプト、シリア、ポルトガル、アメリカなどの国々に暮らす。

2010年『テルマエ・ロマエ』でマンガ大賞2010受賞。2015年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。2017年イタリア共和国星勲章コメンダトーレ受賞。2024年『プリニウス』(とり・みきと共著)で第28回手塚治虫文化賞のマンガ大賞受賞。

著書に『ヴィオラ母さん』『ムスコ物語』『歩きながら考える』『扉の向う側』『貧乏ピッツァ』『最後の講義 完全版 漫画家・文筆家・画家 ヤマザキマリ』など。

2026年1月現在、『続テルマエ・ロマエ』を集英社「少年ジャンプ+」で連載中。

*Photo:ノザワヒロミチ

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