負の感情は抱えたままでいい――漫画家・文筆家・画家ヤマザキマリが「失敗を恐れる時代」に伝えたいこと。挫折と「もうダメ」の、その先

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たとえば、みなさんは240色の絵の具を持っているかもしれないのに、社会で使うのはそのうちの3色でいい、多くて6色でやめておけ、などという教育をするところもあるわけです。

コミュニケーションをとるのに、ややこしい色も必要ない。赤なら赤、青なら青。一つの社会組織を統括するための記号としての絵の具は、できるだけ少ないほうがやりやすいわけです。

でも、この空間に埋め尽くされている書籍を色彩で表すとなると、とても240色では足りないでしょう。際限のない色彩がうごめいているように感じられますが、何というか、深い安堵感を覚えます。

今までたくさん傷ついて、失望して、悲しみや苦しみといった感覚を経てきて、自分という存在に翻弄(ほんろう)され、疲れ、諦観し、立ち直り、そういったプロセスを経てきたからこそ、得られる安堵感なのかもしれません。

ここではどんなややこしい色彩の絵を描いても、それを甘受してもらえるような気持ちになります。孤高の表現者になるみなさんには、できればそれぞれの人生を240色以上の絵の具で彩ってほしい。

そういった作品や表現を残すことで、世の中では赤・青・黄色だけといわれているけれど、もっともっと絵の具って色を増やしていいんだ、と気がつく人たちも増えてくるはずです。

そのためには、それだけの色彩を得るには、何度も言いますが孤立する覚悟が必要です。たとえ社会生活が円滑でたくさんの人と過ごしていても、自分だけにしかわからない世界を自覚する孤独を避けない覚悟が必要です。

ここに書物を残した人々の多くがみんなそうした孤独感を原動力に変え、こうした書籍に魂を託してきたのだと思います。社会に規制された色彩だけでは足らず、地球が与えてくれた人間として生み出せる限りの色彩がここにはある。頼もしい場所です。

心が沈んでしまったときの向き合い方とは

【会場からの質問】
(ヤマザキさんは)信頼できる友といえる存在が書物や映画の中にあるということですが、私は映画『ショーシャンクの空に』がすごく好きなんです。この作品は孤独や、その孤独から自由になって外に出たときの人間の精神性みたいなものを描いていると思うのですが、見たあとにすごく落ち込んでしまって、浮上できないことがあります。
そういうときに言語化してくれるものが欲しくて、本をむさぼり読むのですが、ヤマザキさんは沈んでしまったときの向き合い方はどうしているんですか?
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