年末の東シナ海に中国漁船が2000隻!海上民兵の大規模動員を訓練か。東アジアの海で進む中国の実効支配、分析能力で日本に課題も

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
中国漁船団の航行データ
12月末に確認された中国漁船約2000隻の集結状況。南北と東西にそれぞれ大きく伸びている(ingeniSPACE社提供、AISデータ)
この記事はダイジェスト版です。詳報版はこちら

2025年12月24日から26日にかけ、東シナ海の日中中間線の中国側海域で、中国の漁船約2000隻が南北470km、東西80kmの巨大なU字線を描いた。船舶自動識別装置(AIS)の情報でわかった。

他船の進入をブロックするかのようなこの態勢は、中国が漁船の大規模動員能力を確立し、その活用に向けて動き始めたことを意味する。地理空間情報分析を専門とするingeniSPACE社から情報提供を受け、筆者らはこの事件の内容、そして日本にとっての意味を検討した。

ingeniSPACEは近年、中国の周辺海域における漁船(潜在的に海上民兵船を含む)の動きをモニタリングしており、その動きが組織化、活発化していることに注目していた。ただしその中で、今回のクリスマスの動きは格別に大きかった。

これまで尖閣諸島周辺や南シナ海で確認された漁船団の規模は、各国政府の発表によれば200~300隻ほどだった。ingeniSPACEのデータベース上に出現した今回の2000隻は、まさに桁違いの規模である。その大半は浙江省から出港していた。

中国漁船は26年1月11日にも、1400隻で南北約320kmに並び、東シナ海に1本線を描いた。この時の隊列は南部で日中中間線をまたいだ。

海上民兵の大規模動員を訓練か

2000隻の動員が始まる直前の12月21日には、福建省厦門市の党委員会で軍事と海上防衛を議論する会議が開かれ、人民武装部党委員会の責任者が党の武装管理活動について報告を行っていた。さらにU字の最終日となる12月26日には、浙江省最大の漁業拠点で東海艦隊の大基地がある舟山市でも同様の会議が開かれ、党の管理下でいかに人民武装工作を発展させるかが話し合われた。いずれも、福建省と浙江省で勤務経験がある習近平のお膝元だ。

習は若き地方官僚だった福建省時代から海洋政策に強いこだわりを持ち、浙江省時代には今日の軍民融合につながるアイデアを独自提起していた。そのため12年に中国共産党の総書記に就任してほどなく、中国の一般漁民を国家の海洋戦略に活用すべく、技術的、組織的な準備に着手した。

この中で、漁船の監視システムや衛星通信網などの開発・配備が進んだ。また国防動員体制も再構築。沿海地域では、人民武装部などの正規職員(軍人)の下で、専任の基幹民兵(退役軍人など)が中心となり、当該地の漁民を民兵として動かす体制が整えられた。

浙江省に専業民兵船が2000隻も配置されているとは考えにくいが、習政権はこれら新型技術の活用や動員体制の再構築によって、漁船への監視・連絡の手段や行動命令を出す体制を確立し、「普通の漁民」の動員を可能にしたとみられる。

次ページ海上民兵の実戦投入が前提
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事