集権化の結果、脆弱になった習政権。その矛盾は外部に噴出しかねない。
中国で3月5日から11日にかけ開催された全国人民代表大会(国会に相当)で、首相の李強が初めての政府活動報告を行った。報告は2024年の経済成長率の目標値を5%前後と設定し、政府の任務の筆頭に「現代化された産業システムの建設」と「新たな質の生産力の発展」を掲げた。中国政府は経済の重要性を軽視してはいない。
むしろ、イノベーションを促進し、中国を国家実験室にしながら、新産業を創出して世界を先導したいと考えている。しかし、何か隔靴掻痒なのだ。
「困難な外部環境」の改善策に触れず
李強は政府活動報告の冒頭で、「異常に複雑な国際環境と、とても重たい改革発展安定の任務に向き合いながら」、習近平を核心とする共産党中央が過去1年に「外部の圧力に耐え」、しっかり任務を遂行したと肯定した。つまり、中国の今日の困難は基本的に外部環境のせいだと述べた。だが彼は、その改善策を説明しなかった。
外交は本来、中央政府が国家主権を行使して相手国と交渉して行うものだ。首相はそこに重い責任を負う。だが李強は習近平外交を褒めたたえるばかりで、報告の主要部分をすべて経済と民生の話題に割いた。なぜならそれが、今の彼に許された職責範囲だからだ。彼が率いる中国政府は、国民経済の不振の原因は除去できない。
外交だけでなく、国防、安全保障、香港・台湾などの政治課題はすべて、共産党総書記の習近平が掌握する。李強が恒例の首相会見を避けたのも無理はないのだ。
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