日中関係が、福島第一原子力発電所の処理水問題で抜き差しならぬ状態に陥っている。日本政府の決定を受け、東京電力は処理水の海洋放出を8月24日に開始した。多核種除去設備(ALPS)で濾過することで、ほとんどの放射性物質は除去でき、残りも安全基準以下になる。
しかし、処理水を「核汚染水」と呼ぶ中国は、日本の水産物を即日、全面的に禁輸し、国内外で反日キャンペーンを展開。中国の日本人学校は投石され、無関係な日本の組織にも中国から嫌がらせ電話がかかった。
民間人の動員に舵を切った
自分にとって気に食わない問題が生じたとき、相手に圧力をかけるのに民間人を動員するかどうか。中国共産党はそのオン・オフを使い分けてきた。今回は完全にオンだ。だが、なぜそうなのだろう。
習近平政権にとって、この問題で譲歩しにくかったのは明らかだ。政権は過去2年余り、米国を中心とする西側陣営を批判したいときに「核汚染水」問題を取り上げてきた。日本が米国との関係を強化し、台湾問題に関心を示すと、批判の強度は上がった。
しかも習政権は国内では、大気汚染を放置した前政権に対抗するかのように「生態文明建設」を唱え、環境保護を推進。8月24日、処理水問題で談話を発表した中国外交部報道官はこう締めくくった。
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