軍事的な行動に目が行くが、中国の海洋進出について国内の計画を分析することが必要だ。

日本の民間機の飛行を妨害するように、中国海警船から飛び立ったヘリコプターが日本の領空を侵犯。5月3日の事件に対し、軍事専門家たちが中国の行動の拡大に警鐘を鳴らしている。それ自体は必要だが、中国の行動の背景や目的はより広い視野で分析されるべきだろう。
中国の海洋進出の動きは「サラミスライシング」と呼ばれる。サラミがスライスされるように少しずつ変化が起き、気づくと現状転覆がなされているという意味だ。ならば、それを起こす中国国内のメカニズムの分析が不可欠だ。
中国では重大な政策決定は指導部が行う。だが彼らは軍や官僚への日常的な監督までできない。社会主義国であるため、国内の大まかな方向性はあらかじめ国家計画で定められる。その基本が5カ年規画(長期計画の意)で、より遠大な目標は5の倍数の10年や15年間の規画で定められる。
海洋に関する中国の国家計画が、国内組織への拘束力を有する形で始まったのは2001年の第10次5カ年規画期からだ。このとき東シナ海のガス田開発が始まり、日中間で争点化した。2011年からの第12次期には、南シナ海でサンゴ礁の軍事基地化が始まった。
その後、習近平政権は、陸と海を統合的に計画せよとする「陸海統籌(とうかい)」政策を強調。2021年からの第14次期に際しては、中国が主張する「管轄海域」と領土に関する地理的計画をすべて統合し、新たな「国土空間規画」の策定に着手した。地上や地下を含む中国の全空間をトップダウンでデザインする、という触れ込みだ。
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