8月末に北京を訪れた。「ゼロコロナ」政策の終了後、2度目の訪問だったが、今回は日中双方の知人からさまざまな不平をぶつけられることになった。
まず、東京電力・福島第一原子力発電所の処理水問題だ。日本では「中国共産党が人民をあおり、政治的駆け引きをしている」との説明をよく聞くが、私の印象では実態は逆だ。怒りの裾野は意外なほど広い。日本びいきの友人さえ「日本はなぜこんな愚かなことを?」と嘆いていた。
彼らの不満は主に2つだ。第1に、溶融した炉心に直接触れさまざまな放射性物質を含む水を、トリチウムだけに焦点を当て「安全だ」と主張する日本への不信感。第2に、東電など日本側の自己評価だけではなく「中国と第三国を含めた検証システム」を求めた中国の主張を無視し、日本側が中国を「科学オンチ」と異端視し攻撃したことだ。
中国による水産物検査の強化を受け日本は対話に応じる姿勢を見せているが、あくまで処理水の海洋放出が前提だ。中国側がそれに異議を唱えると日本側は「対話を呼びかけたのに中国は蹴った」との世論を形成した。
「そんなに東電を信用するのか?」
中国人はコバルト60、ストロンチウム90、ヨウ素129、セシウム137など、さまざまな放射性物質をALPS(多核種除去設備)で除去できるとの説明は信じようとしない。日本をよく知る中国の友人からは、「日本人はいつからそんなに東電を信用するようになったのか?」と皮肉を言われる始末だ。
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