年末の東シナ海に中国漁船が2000隻!海上民兵の大規模動員を訓練か。東アジアの海で進む中国の実効支配、分析能力で日本に課題も

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すなわち、東シナ海の大規模動員は偶然でも気まぐれでもない。習政権は一般の漁民をその意思の下で動かすべく、過去10年あまりを用い、技術的・組織的な体制構築をじっくりと進めてきた。それを今後、彼らが活用しないはずがないのだ。

こうした動員を行う習政権の目的は何か。中国は25年11月12日以降、台湾問題で反・高市早苗政権キャンペーンを展開している。短期的に日本や台湾に対する威嚇や圧力拡大の意味はあっただろう。

ただし、習政権の目的はより長期的である。前述した25年12月26日の舟山会議では、責任者が「兵の訓練と戦争への備えを重視し、国防動員と予備戦力の建設を強化し、本市における『第15次五カ年計画』の国防動員建設と軍民融合発展を高いレベルで進めよう」とスピーチしている。

東アジアの海で中国の実効支配化が進む

つまり中国は、海上民兵の実戦投入を前提に準備を進めている。また「15次五カ年計画」は26年春から始まる。今春以降、中国は東シナ海で無数の海上民兵の活動を常態化させる可能性が極めて高く、それを紛争に投入する意欲も持っている。

中国は各種海洋装備の開発なども進めており、東アジアの海では中国の実効支配化が進みそうだ。加えて中国は、外交・軍事・資源開発の3方面で太平洋への進出も加速している。中国の海洋戦略が26年春から次のフェーズに移行し、中国が西太平洋での勢力圏拡大に動くことは、ほぼ確実な趨勢だ。

となると、今回の大動員の意味は、日本にとって非常に重い。もし今、数千隻の中国漁船が尖閣諸島周辺に押し寄せれば、日本はどれが一般漁船でどれが民兵船か、さらにはどれが基幹民兵を乗せた最も警戒すべき船かも峻別できない。

これまで日本政府は、海洋状況把握(MDA) の能力強化を喫緊の課題としてきたが、実際にどこまで中国の海洋や宇宙での実態把握が行えているのだろうか。世界的水準にある国内の中国研究と、地理空間データ分析の融合を支援し、官民の協働体制を整えることで、中国により真剣に向き合うべきではないか。(敬称略)

(中国フロンティア戦略研究会 執筆:益尾知佐子、毛利亜樹、弓野正宏、土屋貴裕)

中国側が海上民兵動員のために進めてきた詳細な技術開発や動員体制の確立、習近平政権の目的、日本側に求められる具体的な対応などは本記事の詳報版「中国が東シナ海に漁船2000隻を動員して470kmのU字線を形成していた! 技術と動員体制の確立で進む軍民融合、春から海上民兵の活動が常態化か」でご覧いただけます。
中国フロンティア戦略研究会

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ちゅうごくふろんてぃあせんりゃくけんきゅうかい / China Frontier Strategy Research Group

益尾知佐子:九州大学大学院教授。東京大学大学院で博士号(学術)取得。専門は中国外交、東アジア国際政治。『中国の行動原理』(中公新書)ほか著書・論文多数。

 

毛利亜樹:筑波大学助教。同志社大学大学院で博士号(政治学)取得。専門は海洋安全保障、中国の外交・安全保障、インド太平洋の国際関係。海上保安庁有識者ネットワーク「Compass Voice」メンバー。

 

弓野正宏:中国軍事アナリスト。早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。専門は中国における軍を巡る政治の問題。

 

土屋貴裕:京都外国語大学共通教育機構教授。一橋大学大学院経済学研究科応用経済専攻修了。防衛大学校総合安全保障研究科後期課程卒業。博士(安全保障学)。外務省専門分析員、、京都先端科学大学経済経営学部准教授などを経て2025年4月より現職。著書に、『現代中国の軍事制度:国防費・軍事費をめぐる党・政・軍関係』(勁草書房、2015年)など多数。

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