「老いと死」におびえる悩み多き52歳が救いを求めて向かった場所。坐禅と写経、そして住職の珠玉の言葉から得られた気づきとは?
午前11時半。予約していた「写経」体験の時間になった。おそるおそる本堂に上がると、案内の女性が柔和な笑顔で出迎えてくれた。
「写経は椅子に座ってできるんですね。膝が良くないもので、正直、畳に正座じゃなくてホッとしました」
筆者が自虐まじりに、女性に話しかけると「以前は座卓でしたが、ご要望が多くて椅子に変えたんです」とのこと。あちこちガタが来ている50代にはありがたい配慮だ。
写経は、「般若心経」(266文字)か「延命十句観音経」(42文字)のいずれかを体験できる。写経ビギナーの筆者は、迷わず後者を選択。長文だと集中力が持たない気がしたのと、現金だが「延命」の言葉に心魅かれたからだ。
写経を始める前に、「塗香(ずこう)」という粉末状のお香で、「お清め」をする。粉末を少量、手のひらに取り、すり込むのだが、それがまたいい。白檀のような甘く深い香りが立ちのぼり、騒がしかった脳内が沈静した。
合掌し、延命十句観音経を3回唱えた後、写経に入る。筆を持つとわずかに手が震え出し、最近文字を書いていないことを痛感。だが、お経のお手本が薄墨で書かれているため、それをなぞれば何とか書き進められる。お手本を頼りに一文字、一文字、心を込めて書いていった。
文末には、観音様へのお願い事を書く欄がある。謎の不調が多い年だったため、「健康回復」と、来年こそは「開運招福」を祈願。そこだけやたらと筆圧が高かったかもしれない。
たったの42文字なのに、かかった時間は30分強。こんなにも真剣に文字に向き合ったことはあっただろうか。日常では味わえない達成感がじんわりと湧いた。
そこにちょうどよく運ばれてきた、抹茶とお菓子をいただきながら、一服。肩の重みがふっと軽くなった気がした。
雑念だらけの自分に住職から一撃
続いて案内された坐禅堂に上がると、青々しい畳の香りが冬の風に乗って漂ってきた。
この日の参加者は、46名。同世代とおぼしき夫婦や、若い女性のグループも多い。インバウンドの影響で外国人観光客が多いのではと思っていたが、ほぼ日本人だったのが意外だった。
12時30分。坐禅の時刻となった。現れた、住職の宇野虓堂(うの・こうどう)さんの凛とした佇まいに、場の空気が一段と引き締まった。
坐禅体験は、15分間の坐禅を計2回行う。まずはお寺の歴史や坐禅の詳しいやり方について説明があった。


















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