もっとも第1期トランプ政権が出したNSSに比べれば、中国に対する敵対的なトーンは和らいでいるし、「安保よりも経済」という姿勢が色濃く出ている。台湾侵攻を抑止する理由も「民主主義国を守る」などではなく、半導体など経済安保上の実利から説明されている。しみじみ昔のアメリカとは、大きく変わっているのである。そしてもちろんのこと、日本や韓国に対しては防衛負担の拡大を求めている。
具体的な戦略に落とし込むペンタゴン側は苦しみそう
おそらく今回のNSS最大の問題点は、欧州に関する部分であろう。この点、日本の報道は「自分たちは大丈夫」とばかりに、軽く見ている気配がある。が、この問題は洒落にならない。特に投資家目線としては心しておくべきであろう。
当たり前の話だが、欧州のメディアは一斉にNSSを非難している。12月9日のフィナンシャルタイムズ紙社説は、「中国とロシアが喜ぶ内容で、欧州にとってははっきりした警告だ」と酷評している(The White House’s rupture with the western alliance=ホワイトハウスは西側同盟から決裂する)。
いわく、アメリカは「戦略的安定化」の名目で、ウクライナにロシアとの合意を強いるだろう。欧州の指導者たちは、トランプ大統領を説得できると思い込むべきではない。むしろウクライナ支援におけるアメリカへの依存を減らし、みずからの経済的脆弱性を克服せよと説く。今回のNSSは、欧州に対する「Wake-up Call」(目覚まし時計)になると言っている。
真面目な話、このNSSが出た後のアメリカが次に何をするかというと、だいたい半年くらい後に、ペンタゴン(国防総省)がNDS(National Defense Strategy、国家防衛戦略)という文書をまとめることになっている。ホワイトハウスが投げてきた「戦略」を、ペンタゴンが具体論に落とし込むわけだが、最終的にはそれが防衛予算や装備品、作戦など現実面に反映されることになる。この辺り、日本の防衛三文書(国家安全保障戦略~国家防衛戦略~防衛力整備計画)に重ね合わせるとわかりやすいかもしれない。
それでは、どんなNDSができるのか。こんな無茶振りのNSSという上位文書が出てきた場合、巨大な官僚機構でもあるペンタゴンは悩み苦しむだろう。ましてホワイトハウスには国家安全保障担当補佐官が不在であり、いわば司令塔も調整役も期待できない。


















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