同様に、中国の鄧小平も清廉潔白とは程遠い経歴ながら、偉大なリーダーと言えるかもしれない。89年の天安門大虐殺を指示するうえで重要な役割を果たしたが、彼は一方で市場を開放し、中国を成長と繁栄の軌道に乗せ、最終的には何億という中国人を貧困から救い出した。
シンガポール建国の父であり、長く首相を務めたリー・クアンユーを、多くの人々は偉大と呼ぶだろう。機会があれば、彼はより大きな舞台で実力を試したかったに違いない。
米国は偉大なリーダーを生み出すのに十分な大きさだ。トルーマンやアイゼンハワーはずば抜けた知性の持ち主ではなかったが、戦後の国際秩序を確立するうえで卓越した判断を見せた。レーガンやクリントンを含む他の歴代大統領もすばらしい才能を持っていた。人の心を動かす能力、あるいは他人を説得する才能とでも言えばいいだろうか。
その両方の要素を少しずつ持ち合わせていたのがケネディだ。キューバ危機の解決という大きな功績を残している。そして人を動かす才能は他に類を見ないものであり、暗殺されたことにより揺るぎない伝説を残した。
アフリカではマンデラ元南アフリカ大統領の死後、勇気と権力と寛大さを優雅に兼ね備えた人物は出ていない。マンデラは私が会った中で最もカリスマ性があり、魅力的なリーダーの一人だ。あと二人挙げるなら、アナン前国連事務総長とパウエル元米国務長官で、彼らもアフリカ人もしくはアフリカ系米国人だ。
現在ではメルケル首相だけ
では今日はどうか? 現在の欧州で偉大な人物はメルケル独首相ただ一人だ。コール元首相同様、最初は見くびられる傾向のあった彼女だが、重要な決断においてはつねに正しい答えを出す。
コール元首相は東西統一の際に寛大な条件を示したし、メルケル首相はプーチン・ロシア大統領によるウクライナ介入に対し毅然とした態度を示し、移民危機についても寛大なアプローチを取っている。
政治的リーダーシップを発揮する人々は、よくも悪くも大きな変化を歴史にもたらすことができる。困難な課題により存亡の危機に直面している欧州が必要とする方向性を示すメルケル首相は、今日におけるその最も顕著な例だ。
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