──うちの大学にテロ野郎いたんだけどwww
工藤が大学キャンパスを歩いている画像が投稿されていた。
──テロ動画の顔と完全に一致で草
──こいつM大学の学生だったのかよ
──せっかくいい大学いったのになー
──人生終わったなw
再び万次郎からDMが届く。
匿名の人々が打つ左ボディ
──さて、左ジャブを二発打ちましたので、次は左ボディを打ちます。とは言っても、左ボディはわたくしが打つわけではありません。同盟ともL41番さんともまったく関係ない、他人が打ってくれます。麺屋ムラカミを攻撃していた、匿名の人々ですね。
──匿名の人々が、彼らの正義によって、工藤をじわじわと、さながらボディブローのように追いつめていくことでしょう。むむ、エセ預言者のわたくしには、工藤の卒業アルバムが晒される未来が見えます。ご尊顔、住所氏名特定というレバーブローで彼のガードは下がり、顔面がガラ空きになることでしょう。そのガラ空きの顔面に、左フックたる民事訴訟、損害賠償一千万を請求してノックアウトしましょう。
──裁判は子供部屋同盟・法務部のこどおじの星、敏腕悪徳弁護士の竹中平八郎君が担当いたします。相手は大学生ですが、ま、三百万くらいなら搾り取れるんじゃないですかね。平八郎君が、裁判検討の旨を三人に通達しておきます。奥様は旦那様に、次のようにお伝えください。「お客さんが紹介してくれた弁護士に民事裁判を勧められたんだけど、どう思う?」旦那様の承諾が得られたら、さっそく訴状を作成いたします。
──では、旦那様の前向きなお返事を期待しております。
その文面を読む間にも、動画や画像のリポストは増え続け、すでに一万に達しようとしていた──。
翌日の午後、絢香はいつものように夫の病院へ見舞いに訪れた。
工藤が特定されて、ネットで大騒ぎになっていることを夫に伝える。夫はというと、そこまで興味がなさそうだった。
「まぁ自業自得だろうなぁ。今の時代、どこから身元が特定されるかなんて分かったもんじゃないしなぁ」
「お客さんが紹介してくれた弁護士が、工藤たちを民事裁判で訴えようって話があるんだけど、あなたはどう思う?」
「訴えても、どうせあいつらに支払い能力なんてないんじゃないか?」
やはり夫はあまり気乗りしない様子だった。
と、病室の入口に人の気配を感じて絢香は顔を上げる。
入院病棟にふさわしくない、私服姿の三人の若者が病室へと入ってきた。
工藤と富田と佐伯だった。


















無料会員登録はこちら
ログインはこちら