早紀さんは、あるとき娘さんが放った言葉を今でもよく覚えています。
「お母さんは自他の境界があまい。人の悩みに引きずられ過ぎ。お母さんがカウンセリング受けたほうがいいよ」
「私の悩みも聞いてほしいのに、お母さんが引きずられると家全体がその悩みに引きずられる。その暗い雰囲気がイヤ」
娘さんは、家族の問題をひとりで背負い込もうとする早紀さんの性質を指摘しました。そしてその言葉に、早紀さんは自分自身が自己肯定感の低い子どもだったことを思い出しました。
「私は小さな頃から自分が嫌いでした。だから子どもたちには私のような人間にならないように、過大な期待を寄せて子育てをしていたのかもしれません。容姿がかわいくて、勉強もできて、安定した職業に就くことを望む、型にはめた子育てですね」
自分のことを「薄っぺらい人間だった」と表現する早紀さんは、人と深く付き合うことをずっと避けてきたそうです。しかし、娘さんの不登校などを通じて自分を見つめた数年間で、「その穴も少しずつ埋まってきたような気がします」と話してくれました。
子どもを思うがあまり、見えなくなる現実
早紀さんのお話からは、進学校に通う子どもたちが置かれている厳しい環境が見えてきます。実はこれは、私が不登校の相談を受ける中で何度も耳にしてきた実態でもあります。
学校や家庭からのプレッシャーを受け、ありのままの自分でいられる場所を失ってしまう子どもたち。そんな中、心を病む子が増えています。そしてそのストレスは、いじめ・不登校・自傷といった形で表面化してしまうこともあります。



















無料会員登録はこちら
ログインはこちら