第6に、これに似ているが、政府介入で、その補助に喜んで飛びついてくるのは、民間セクターでは自力で勝てない、負け組だけである。目利きができない以上、近寄ってくる、積極的に政府に賛同する企業、人、プレーヤーを政府としては歓迎せざるをえないし、今の高市政権のように浮かれているときは、自分の能力を過信して、近寄ってくる奴を見分ける能力が通常時以上に低下する。これでは、大惨敗必至である。
第7に、「17分野」として挙げられているのは、有望分野、今流行っている分野で、日本がかつては有力だったが衰退してきた分野か、日本企業は大きく出遅れている分野である。
つまり、すでに負けている分野で「取り戻せればいいなあ」と指をくわえてみている(いた)分野である。いわば「かつての栄光を取り戻せ」(ラピダスもだ)という、必ず失敗する情緒的な戦略である。また負けてきたのはそれなりの理由がある分野で、政府が金と声をかけたぐらいではどうしようもない分野ばかりである。
第8に、そのうちの多くは、経済安全保障の観点から、といわれているが、それはつまり、日本がその分野から排除されて困っている分野であり、負け組なのである。
今作れないのは、それを作っている中国またはアメリカと同等のものが作れないからであり、完全に負け組なのである。それを自給自足することに成功したとしても、世界的に劣ったものしかできないのである。つまり、その部品を使う日本の最終製品は、世界的に劣った最終製品になるのである。負け組の寄り合い所帯に政府が金を出すのでは、かつそれが先端分野であれば、「ごみ溜め」にしかならない。
第9に、経済安全保障とは、本来、レアアースのような、経営や技術など何もいらない、存在した時点で、戦略的な資源になるものである。半導体はレアアースと違い、関わった人によって価値が変わる。したがって、それを政府が経済安全保障として守ったとしても、価値のあるものにはなりえないのである。
第10に、食料などの必需品で、とにかく自給自足させればいいもの、それと軍事的なもの、造船などを含むもの、それらは、経済安全保障としてやる意味はある。しかし、それは民間経済では採算が取れないから、衰退してきたものであり、政府として、社会的価値観として支援するのはいいが、経済合理性からはペイしないから、政府がやるものであり、経済成長への貢献度はマイナスである。経済合理性のないものに金と人材を突っ込むわけであるから、社会政策としては望ましかったとしても、経済成長戦略としては、むしろ経済成長をマイナスにするものなのである。
日本経済が崩壊しないように自助努力するしかない
まあ、これ以上議論する必要もないが、そもそも、戦略重点分野で17分野もあっては「どこが重点だ、1つか2つだろ」と言いたくなるし、それぞれに大臣が噛んでいては、日本成長戦略会議を見ても、人数が多すぎて議論にならないし、うまくいくはずがない。
われわれにできることと言えば、やはり、高市政権が崩壊するだけでなく、日本経済が崩壊しないように、政府とは無関係に自助努力することぐらいしかないだろう(なお、今回は競馬コーナーはありません)。
※ 次回の筆者はかんべえ(吉崎達彦)さんで、掲載は11月22日(土)の予定です(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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