経済政策の暴走が止まらなくなる懸念
高市首相の政策変更が起きない理由は3つある。第1に、国会の議論を聞いていると、野党のほとんどの質問は、高市首相にもっと大規模な財政出動を迫ったり、さらなるデマンドプル型のインフレを起こすようにマネーをばらまいたり、そして、消費税などの大減税を迫ったり、と変節どころか、加速させようとするものばかりだ。
財政規律に関して釘を刺したのは、「有志の会」の緒方林太郎議員の、「保守主義とは、財政においては、拡張主義とは逆のはずだ」、という格調高い質問だけだった(彼が無所属というのも暗示的である)。
第2に、高市首相は勉強熱心だが、周りは見えておらず、少なくとも経済政策においては、状況判断を常に間違っている。現時点で180度間違っているのは、この連載でも指摘したとおりである。しかも、ブレーンの思想が偏っていては、彼らを師として熱心に勉強した高市首相の経済政策は「誤りの2乗」になってしまう。
第3に、そのブレーンの存在が大きな障害となるからである。高市首相は、権力を維持するためなら何でもするから、選挙のためなら変節もありうるが、ブレーンたちは違う。
彼らは、自分たちの主張するポジションこそがすべてであり、存在意義であるから(特にこのように偏ったポジションをとっている人々はなおさらだ)、「進め!」という大将の号令には、「オー!」と大将が望む以上のスピードで突き進む(大将に気に入られ、重用されるために)。
しかし、突然逆方向に「引けー!」と言われても、もう引っ込みがつかないのである。引っ込むときは、別のポジションをとっているブレーンと交代するときだから、何としてでも、これまでのポジションをとるべきことを、維持するべきことを大将に説得しようとする。高市首相は、もともと自分で経済を理解しているわけでないから、ブレーンに説得されると、どうしていいかわからなくなるだろう。
安倍政権のアベノミクスとの違いは、当時は、官邸におけるスタッフが、経験豊富でかつ安倍首相に個人的にも忠誠を尽くそうとしたが、今はまったく違うことである。彼らの一部を高市政権は引き継いでいるが、彼らは、形式的にお付き合いしているにすぎず、身を挺して高市首相を止めることなどしない。求められれば動くが、あえて苦言を呈したり、直言をしたりはしないのである。
この3つの理由は、いずれも原始的なことで経済の中身とは関係ない。だが、これらの人間的な他愛もない要因により、高市首相の経済政策の暴走は止まらなくなってしまうだろう。
しかも、この暴走の可能性が、高支持率により助長された。ブレーンたちも、大臣を拝命してやる気になっている同種の経済政策の考えを持っている議員たちも、そしてなにより高市首相本人が、浮かれてしまっているから、もう誰にも止められない。



















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