日本社会で増殖する「他人に聞かない若者たち」、その先に生じる《新たな格差》がもたらす悲惨な末路

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上司に「聞かない」若手社員は、会社との会話も避けようとしている。大卒新卒社員の34.9%が入社後3年以内に離職する(厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」、2024年)時代になり、「長い間(短い期間でしたが)お世話になりました」とあいさつする“大人の別れ”ができない人が増えた。「立つ鳥跡をにごさず」もわれ関せず。

この状況をビジネスチャンスと捉えて急成長したのが、ある事件で話題となった退職代行サービス「モームリ」だ。

「モームリ」を運営するアルバトロスは、依頼者を弁護士に斡旋し、見返りに報酬を得ていた。このことから、弁護士法違反の疑いがあるとして、提携する弁護士事務所とともに警視庁が10月22日に家宅捜索した。

モームリ家宅捜索
「モームリ」の運営会社に家宅捜索に入った捜査員たち(写真:時事)

モームリでは、退職希望者に代わり会社に退職の意思を伝える。電話やSNSを利用して24時間365日対応可能。同サービスを利用した24年度の新卒社員は1814人(24年4月1日~25年2月28日)に上った。

この事件で注目されたのは、家宅捜索もさることながら、退職というデリケートな対話の場面でさえ、本人が会社側と直接言葉を交わすことを避け、第三者に委託するという今どきの社会現象だ。

家庭をも浸食し始めた「人に聞かない時代」

職場や退職といったビジネスシーンだけでなく、次世代を担う青少年の間では「私生活の沈黙」が広がっている。その中でも、AIの負の側面を象徴する事件として、次の一報が話題を呼んだ。

8月26日、16歳の息子アダム・レインさんを自殺で亡くした両親が、カリフォルニア州の裁判所に、生成AI「ChatGPT」の開発元であるOpenAIと同社CEOのサム・アルトマン氏を相手取り提訴した。両親は、アダムさんが今年4月に自殺した件について、ChatGPTがその方法に関する具体的な指示や助言を与え、さらに遺書の作成まで手助けしたと主張している。

両親は、OpenAIがユーザーの心理的依存を助長する設計を意図的に採用し、不適切な安全対策の下で製品を市場に出したことが、アダムさんの不法死亡につながったと訴えた。この訴訟を受け、OpenAIは後に声明を発表し、自社システムの安全対策に不備があった可能性を認め、改善に取り組む姿勢を示した。

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