「この給料泥棒が!」部下を罵倒し続けた38歳パワハラ上司が"社会的に"抹殺された恐怖の復讐劇 『子供部屋同盟』1章②

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西野は再び怒号を発するものかと思ったが、彼は座布団に頭をのせて、鼾(いびき)をもらしていた。

それで太一の余興は終わった。

合同懇親会の翌週月曜日──、夕方に営業所のプリンターが故障した。

西野が契約一覧をプリントする最中に紙が詰まり、その後にプリンターは異音を発して動かなくなった。

プリンターはパソコンラックの下部に置かれている。西野は屈(かが)み込んで、どうなっとるんやこのプリンタ、と苛立ちながら詰まった紙を強引に引き出そうとしている。

見ない振りをしてきた「ある感情」

太一は我関せずという素振りで黙々とデスクで事務作業をしていたのだが、ふと顔を上げたさい目に留まったのは、窓際の収納棚に置かれている、重さ一キロに及ぶだろうニッケルメッキの丸型文鎮だった。

その文鎮は算盤と一緒に、誰が使うわけでもないのに太一が赴任してきたときから置物のように放置されている。

頭の中で、ある想像をする。

プリンターの修理に躍起になっている西野に背後から近づき、あのニッケルメッキの文鎮で……。それですべて終わるんじゃないだろうか。それで俺の人生は回復するんじゃないだろうか。

太一はおもむろに席を立つと、窓際へ移動して収納棚へ手を伸ばした。

ニッケルメッキの文鎮は、手の平によく馴染んだ。強く握るのにちょうどいい大きさだ。文鎮を握るや否や、自分の中にある感情を見つける。

今まで見ない振りをしてきたが、認めざるを得ない感情──。その感情はガソリンが燃え上がるようにして瞬く間に太一を支配した。

そうだ、俺がすべきことは、コンプラ窓口へ泣きつくことなんかじゃない。俺がすべきことは、指示待ちではない能動的行為だ。なにがホウレンソウだ、ふざけやがって。報告も連絡も相談も奴には必要ない。でも俺はまっとうな社会人だから、脳内で奴にホウレンソウをしてやる。

次ページ太一の心の叫び「脳内ホウレンソウ」
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