友光氏が声明と出会ったのは比叡山での修行のときだ。天台声明とは法要儀式に際し、経文や真言に旋律抑揚を付けて唱える仏教声楽曲。修行に際して電子機器などは没収されるため「音断ち」状態にあった友光氏は、その素晴らしさに衝撃を受けた。とはいえ、はたして友人たちが同じように興味を持つか半信半疑だったという。ところが心配は杞憂だった。
「断然よかった!」「すごいきれいじゃないか!」「もっと仏教コンテンツ出してよ!」と大好評。「僕的には、『お寺に来ていただいたんで声明だけでもちょっと聞いていっていただけませんか』いう気持ちで用意したのですが、みなが仏教コンテンツに興味を持ってくれたのです」
「座禅もしてみたいし、精進料理も食べてみたい!」とリクエストが相次ぎ、コンテンツとして「やっぱりこれ、格好いいよね」と確認できた。格好いいというより、必然性を持って受け継がれてきたものの美しさを認識したともいえるだろう。
石を投げる人のところに行く
「もっと仏教コンテンツを!」の声に応え、2年目はLIVEと声明に加え、座禅と精進料理が加わり、参加者も150人と約2倍に増えた。コンテンツを充実させるにあたっては、友光氏が裏方に回って専門家を集めたことが飛躍につながったといえる。友光氏は言う。
「DJ時代の僕は成功したとは言えませんでした。それは、自分のDJが上手いか下手か、どう見られるかということにこだわっていたから。向源はその道のプロにお願いすることで、どんどん広がっていきました」
3年目は品川エリアの4カ所のお寺で実施し、4年目から増上寺が会場になり参加者は2000人を超え、今年の参加者は6000人を超えた。
「僕の仕事は、協力してくださる人を探し、思いを伝えてお願いをすること。最初はネットで検索ですよ(笑)。『お寺、イベント』などのキーワードで検索したり。会いたい人を見つけたら、ツイッターやフェイスブックでコンタクトを取り、会いに行って趣旨をお話しする。その繰り返しです。未来の住職塾で出会った宗派を超えた僧侶仲間たちとの出会いも大きかったですね」
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