湿布、塗り薬、糖尿病治療薬まで…"年間475億円"の医療費がムダに――高齢者の自宅に眠る「残薬」。実家で見つけたら捨てずにすべきこととは?

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このケースのように、医師から処方された薬が何らかの理由で使われず、家に大量に残されている「残薬」問題。以前から取り沙汰されてはいるものの、なかなか改善されない現状がある。

厚生労働省の「2013年度薬局の機能に係る実態調査」によると、残薬がある患者が「いる」と答えた薬局は約9割、「薬が余った経験がある」と答えた患者は約5割にのぼる。

残薬が生じる主な理由は、「飲み忘れが積み重なった」「自分で判断し、飲むのをやめた」「新たに別の医薬品が処方された」「飲む量や回数を間違っていた」「別の医療機関で同じ医薬品が処方された」の順で多かった。

年間475億円もの残薬が発生

残薬によって生じるさまざまな弊害について、薬局を運営する株式会社ファーマ・プラス(高崎市)の専務取締役で薬剤師の小黒佳代子さんは、まず「医療費の無駄」を指摘する。

厚労省によると、23年度の概算医療費は、前年同期比2.9%増の約47.3兆円、調剤医療費は同5.5%増の約8兆2678億円。

日本薬剤師会の07年の調査では、残薬の推計は75歳以上の在宅高齢者だけで年間475億円とされている(後期高齢者の服薬における問題と薬剤師の在宅患者訪問薬剤管理指導ならびに居宅療養管理指導の効果に関する調査研究)。

薬局の介入で削減できる残薬の額を年間3300億円と試算した、九州大学と福岡市薬剤師会の調査結果もある。

残薬は「医療費の無駄」にとどまらず、「患者の健康面で問題が生じるリスクもある」と小黒さんは次のように話す。

「薬が余っていても、きちんと飲んでいなかったことを医師に伝えるのは悪い気がして言わない患者は少なくない。そのため患者が飲んでいなかったことを知らず、医師は薬の量を増やしたり、別の強い薬に変えたりして残薬が生じる」

「本来、使用すべき薬を適切に使っていないことで、治療の効果を十分に得られなかったり、症状が悪化したりする危険性がある。似たような症状だからと、後日、自己判断で残薬を飲んで、思わぬ健康被害が起きることもある」

残薬となりがちな薬の種類は、写真にもあった軟膏や湿布のほか、点眼薬や、鼻炎や喘息症状などで用いる吸入薬といった外用薬。症状がひどいときに頓服的に用いる解熱鎮痛薬や便秘薬。そして服薬回数の多い漢方薬だという。

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