クマ被害撲滅へ…山から人里への"移動ルート"を断ち切り、本来の生息域に押し戻す「ゾーニング」という"有力防衛策"【専門家に聞く】

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実際にゾーニングを行った結果、昨年度は19件だったクマの目撃数が、今年10月24日時点で9件にとどまっている自治体がある。

それは山に囲まれた長野県の箕輪(みのわ)町だ。

箕輪町では、事前のモニタリングにより、クマの目撃情報の多かった地区から優先的に下草を刈って緩衝地帯を作り、栗や柿などの木を切って果樹園などにクマが入れないように対策を行った。

「各自治体は普段からクマの捕獲記録、目撃情報や被害情報などから生息地域と生息数をモニタリングして、翌年の管理計画やゾーニングに活かすべき。すでに兵庫県や島根県など、一部の県では毎年しっかりと行われています」(山﨑さん)

まずは「排除地域」でクマ排除

こうした取り組みにはある程度の時間がかかる。いずれにせよ集落や市街地に入り込んでしまったクマは捕獲する必要がある。

今年9月からは、以下の4条件を満たした場合に、集落や市街地でも銃を使える「緊急銃猟制度」ができた。

① クマやイノシシが人の日常生活圏に侵入している、またその恐れが大きいとき
② クマやイノシシによる危険を防ぐための対策が緊急に必要なとき
③ 銃猟以外では的確かつ迅速に捕獲することが難しいとき
④ 第三者に銃器による危害が及ぶ恐れがないとき

今のところ、クマを撃って市民を守っているのは地元の猟友会だ。しかし、高齢化が進んでいること、またアマチュアかつボランティアであることから、危険性や責任の重さが問題視されている。本来、地域住民を守るのは自治体のはずだ。

「クマ類の総合的な管理のための交付金制度があるので、さまざまな自治体で人材育成を開始しているはずです。今後は高い技術と知識をもった新しい世代の捕獲従事者を集めた団体を『認定鳥獣捕獲等事業者制度』により認定し、責任の所在や保険も含めた契約を結んで委託すべきです」(山﨑さん)

来年度からは、環境省は自治体がハンターを職員として雇う費用に充てる交付金を新設する予定で、秋田県も公務員ハンターを募集・採用するとしている。

「つい先日、警察庁はクマによる被害の大きい県を念頭に、機動隊員がライフル銃を使用して、クマの駆除を行うことを検討していると発表しました。これも1つの方策でしょう。ただし、クマの生態や捕獲手法についてきちんと学ぶ必要はあります」(山﨑さん)

こうして駆除をする人員が増えれば、クマの山への追い返しもうまくいくのではないか。

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