クマ被害撲滅へ…山から人里への"移動ルート"を断ち切り、本来の生息域に押し戻す「ゾーニング」という"有力防衛策"【専門家に聞く】
集落や市街地に出てきたクマも、初めは人を怖がっていた。人を傷つけるのは自身の身を守るためだった。だが、山でのシカの幼獣と同じように、倒した相手を食物として利用することを学習してしまったクマは、稀に人を食物の対象とする。
山﨑さんは「人を狙うクマは何度も人を襲う。だから駆除をするしかない」と話す。だからといって、山からあふれ出たクマを駆除し続けるのではキリがないという。
「ゾーニング」とは?
「何より大切なのは、クマを本来の生息域である奥山に押し戻すこと」と山﨑さん。そのために必要となるのが、人間の生活域とクマの生息域をしっかり分ける「ゾーニング」という考え方だ。
このゾーニングについては環境省がガイドラインを出している。
具体的には、各地の状況に合わせて、
①クマが暮らす「コア生息地」
②クマの生息域と人間の生活圏を分ける「緩衝地帯」
③農林水産業が行われる「防除地域」
④人が暮らす集落や市街地などの「排除地域」
を決め、それぞれに必要な対策を行うというものだ。

「クマのコア生息地をきちんと保全しつつ、緩衝地帯から防除地域ではクマが隠れられないよう草むらをなくす、クマが好む柿や栗などの木を伐採する、農地には電気柵を設置する、また過疎高齢化の中では、ICTやAIの活用といった対策が有効です」(山﨑さん)
同時に、農地や家庭菜園に作物の残りを放置しないことも重要だという。
ただし、こうした取り組みを高齢者ばかりの集落で行うのはとても難しい。また、個人でやっても効果が上がりづらい。自治体のサポートを受けつつ、地域全体で取り組むことが大事になる。


















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