京都のど真ん中に《生きた"団地歴史博物館"》 築70年超「京都の廃団地」に、なぜか人が殺到する理由

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「アーティストが活動するために必要な機能は、おおまかに3つ。滞在、制作、発表があります。それが西陣ですべて可能になるようになっています。西陣付近に5カ所、拠点を作りました。1カ所に集中するのではなく、近隣とはいえ、点在する場から場へ移動を発生させることで、日々ハプニングに出会ってほしいという狙いがあります」

団地の住人であることを生かして、町内会や商店街の組合ともつながって、アーティストと街の生活者をつなげることもしている。

「地域の生活文化のケアをしながら、地域と世界をつなげられればいいなと思っています」

飯高氏
「ANEWAL Gallery」運営の飯高克昌氏(筆者撮影)

「アーティスト・イン・レジデンス」に手応え

今年の5月、スペイン・バルセロナから堀川団地に2週間、アーティスト・イン・レジデンスしたアビゲイル氏は、「鴨川、御苑、相国寺など団地から徒歩あるいは自転車で行けます。朝、鴨川で見た風景がすばらしかった」と、創作意欲を刺激されたと目を輝かせた。

アビゲイル氏はドラえもんとドラゴンボールで日本を知り、日本の文化に興味を持って日本画を勉強している。自身が描いた絵を背景に舞踏を踊るというパフォーマンスも行っている。

「京都で好きなのは西日。赤の強いオレンジで独特の美しさがあります。団地は東と西に窓があり、朝日と夕日をどちらも楽しめます」

アビゲイルさん
アーティスト・イン・レジデンスで来日したアビゲイルさん(筆者撮影)

団地の住人たちとの交流も行った。

「団地の人たちのお話を聞きました。商店街の方々、団地の住人の方々とそれぞれの立場でできることをシェアすることの大切さを感じました」

団地でのアーティスト・イン・レジデンスには手応えを感じていると飯高氏。

「アーティスト・イン・レジデンスは創作の成果を見せるまでがワンセットという考えもありますが、僕は成果展がなくてもいいと思っていて。むしろ、ほかの団地の住人や地域の方々と交流してもらうことそれだけで成果。それこそ団地再生のコンセプトである“アートと交流”だと思います。経験がふとしたときにポッと創作の種になることが最高なのではないでしょうか」

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