京都のど真ん中に《生きた"団地歴史博物館"》 築70年超「京都の廃団地」に、なぜか人が殺到する理由

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リノベーションにもいくつかパターンがあり、昭和レトロの面影をあえて一部残したしつらえの部屋もある。

先述した「立体型京町家」とは、階段室型(階段を上がった左右に部屋がある)と違い、片廊下型で、2階住戸の手前には共用ベランダが設けられ、建設当初は地蔵盆などの行事にも使われていたようだ。

そのベランダもウッドデッキとして残し、住人の憩いの空間になっている。

堀川団地
リノベーション前の住戸の内部(写真:京都府住宅供給公社提供)
堀川団地
リノベーション後。左手奥の台所と和室をつないでいた配膳台はそのまま残されている(写真:京都府住宅供給公社提供)

1階の堀川商店街は、昔ながらの生活雑貨のお店があれば、数々のラテアート競技会での優勝経験を持ち国内外で活躍するトップバリスタのコーヒー店があったり、チョコレートショップがあったり。

クオリティの高い、予約オンリーの隠れ家的レストランがあるかと思えば、庶民的なラーメン店や立ち飲みできる焼き鳥店があるなどさまざま。

また、福祉施設も充実していて、介護施設から大人も子どもも誰もが気軽に集まれる図書室などが幅広く並んでいる。安価で借りられる学生向けのギャラリーもある。

堀川団地
壁はあけび色でクラシックに。襖はドット柄でポップに。床は土間を生かしてリノベーションされた室内(写真:京都府住宅供給公社提供)

抜群の立地がゆえに「団地の再生」が遅れた

老若男女、生活感とおしゃれ、面影と新しさが入り交じった、不思議な一帯の最南端が「椹木町団地」だ。現時点で唯一、当時のまま残った貴重な建物である。

住人退去後、長らく空き家になっていて、ふだんは立ち入り禁止だが、先述の見学ツアーの目玉で、そのときだけ中を見ることができる。そこはレトロモダンの極地、パリのアパルトマンのような風情にため息が出る場所だ。

椹木町団地
「椹木町団地」の玄関扉。当時の面影がそのまま残る(筆者撮影)

1951年に提案された団地の標準設計51C型の流れを汲んだもので、造り付けの食器棚などもまさに昭和レトロ。ここをこのまま空き家にしておいてはもったいない。

京都美術工芸大学副学長、京都大学名誉教授にして一級建築士・髙田光雄氏率いる京都美術工芸大学の研究チームによって椹木町団地の保存活用の活動が進行中。

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