京都のど真ん中に《生きた"団地歴史博物館"》 築70年超「京都の廃団地」に、なぜか人が殺到する理由
こうして、「西陣エリアの玄関口」という堀川団地の立地を生かした再生プロジェクトが本格化。13年に6棟のうち2棟の改修事業が行われた。
西陣とは、応仁の乱の西の陣があったエリアで、織物職人たちによって発展した西陣織の発祥の地である。
またそのとき、京都府から提示されたコンセプトが「アートと交流」だった。
アーティストの入居者を募集し、いわばアーティスト・イン・レジデンス(一定期間滞在して、リサーチや制作、発表を行うこと)的な活動を行ってもらって、発信していくことで団地を活性化する。
アーティストのみならず、若手不動産プランナーなど、この街の再生に可能性を感じた人たちがコラボレーターとして集まってきた。
廃店舗に残る「息遣い」がアート
このたび椹木町団地で展覧会を行う山ノ瀬氏は、このコラボレーターの第1期だ。彼は団地の一室に工房を作り、江戸時代に発祥した和眼鏡を、デザインから制作まで1人で行っている。
「団地が背景にある西陣という場所は職人の街。ものづくりを地域が支えている。そういう環境の中で、住む人たちの顔を見ながらものづくりがしたいと思ってここに移り住みました」と言う。
「1階の廃店舗の、剥がした壁の下にある寸法や計算のメモ書き、土間に残る足跡。そこにある息遣いは、そのときそこにいた職人の生き様があった確かな証拠だと言えます。記憶の断面にあるアート、それはこの団地に積層する痕跡の1つとして歴史的価値に加わるものとなっていきます」
この地域の文脈を残しながら変化していく、まさに現在の堀川団地の状況と重なるような展示になるだろう。
山ノ瀬氏のように住人としての顔も持ちながら長く生活と創作を行っているアーティストもいれば、短い期間に訪れて去っていくアーティストもいる。
団地の住人で、「ANEWAL Gallery(アニュアルギャラリー)」という西陣の周辺でギャラリーや滞在施設を運営している飯高克昌氏は、京都に興味のある外国人アーティストと団地をつないでいる。


















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