会社を守るのが経理・財務の役割

経営評論家・金児昭氏④

かねこ・あきら 1936年生まれ。61年、東京大学卒、信越化学工業入社。99年に常務で退任するまで38年間、経理・財務の実務一筋。公認会計士試験委員、金融監督庁(現金融庁)顧問を歴任。経済・金融・経営評論家、作家、信越化学工業顧問、日本CFO協会最高顧問など。

経理・財務の役割は会社を潰さないよう、1円の利益を出すようにサポートすることだ。

信越化学工業の経理・財務として財テクは1円もしなかった。そうしたことが評価されて1998年から2年間、金融監督庁(現金融庁)の顧問になった。実際は何もやらないほうが楽だから財テクをやらなかっただけ。ただ、バブル期には何もやらないことも大変だった。「何で財テクをやらないのか」と、横や斜めからヤリで突き刺された。でも、真上からだけは何も言われなかった。私もサラリーマンだからトップから言われたらすぐにやっていた。

経理・財務は事業部門をバックアップするのが仕事で、主役であってはならない。尊敬する小田切新太郎元社長・会長から「経理・財務は、会社を危うくする人やモノを、それが社長である私であっても、絶対に許してはならない。それが最も大切な仕事である」と教わった。

財務会計より経営会計のほうがずっと大事

少し前に国際会計基準(IFRS)導入で大騒ぎになった。米国や韓国が導入すると発表したから、日本も取り残されてはならないと大合唱が起こった。でも、世界中にいろいろな国があり、その国の経済がある。その中に企業があって、その中に会計がある。間違いの元は、世界中で会計が一つでないといけないと思ったこと。一つしかないなら米国基準か欧州基準かIFRSのどれかだと思い込んだこと。日本人はアメリカンとかインターナショナルとかグローバルという言葉に弱いだけだ。

 会社の経営を100とすれば会計の重要度はわずか1。会社の経営が100とすれば国の経営は1000くらいのはず。1しかないはずの会計が企業や国の経営を振り回すことが間違っている。欧州危機が起こったからIFRSどころではなくなり、日本も当分、導入を先送りすると決めたが、それでいいと思う。会計にはIFRSなどの財務会計と会社をよくする管理会計(私は管理会計のことを経営会計と呼んでいるが)がある。一般には財務会計が重要と思われているが、財務会計より経営会計のほうがずっと大事。

あと、過度の内部統制もおかしいね。2001年に米国でエンロン・ワールドコムが問題になって内部統制が強化されたが、エンロン・ワールドコムの1万倍も大きいリーマンショックが起きた。ちゃんとした内部統制はやらなきゃいけないが、「過度の」は問題。それは「過度の」をやると膨大なコストがかかるから。それが経営の足を引っ張っては意味がない。

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