「カスハラ」に誠実に対応しても害をもたらすだけ…【クレームは宝の山】が時代錯誤になった納得理由

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従来は、企業のクレームに対する姿勢は、概ね次のようなものでした。

「クレームはお客様からの大切な指摘であり、製品やサービスの品質向上に役立つ企業の財産である」

「クレームに真摯に耳を傾け、お客様が納得するまで誠実に対応することで、そのお客様がお得意様になる」

このような姿勢のもとで、企業はどんなクレームに対しても誠実に向き合うことを現場の従業員に要求したのです。

そのため、これまでは、単なるクレームにとどまらず、カスハラ加害者に対しても、お客様としてていねいに扱うべきという風潮があったかと思います。

「カスハラ加害者」に誠実に対応しても意味がない

確かに、クレームのなかには、企業にはわからない気づきをもたらしてくれるものもあり、それが商品開発やサービス向上のヒントになる事例もあるでしょう。私もそうした事例を否定するわけではありません。

しかしながら、現代においては、顧客の声を聴く手法は多様化しています。店舗やコールセンターなどで顧客から直接クレームを聴くだけでなく、アンケート、モニターの募集、SNSによって、顧客の声を分析し、商品やサービスの向上につなげることもできます。

そもそも正当なクレームならともかくとしても、カスハラ加害者に誠実に対応しても、商品やサービスの向上に役立つことはありません。

そうした対応で品質向上を目指すこと自体が離職率の増加という弊害をもたらし、結果的に製品やサービスの品質低下を招くのです。

また、インターネットやSNSの普及によって、顧客のクレームがSNSやインターネット上で拡散されやすくなり、誹謗中傷に発展するリスクが大きくなっています。こうした拡散された世間の声も顧客の声のひとつと言えなくもありません。

しかしながら、大元のクレームから拡散された世間の声は、必ずしもその企業の製品やサービスを利用したものとは限りません。誤った情報に基づいて評価を下している可能性もあります。

元のクレームはともかくとしても、元のクレームが拡散することで誹謗中傷に変容した場合に製品やサービスの品質に役立つことはまずないと思われます。

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