昨年春、新潮新書『データ・ボール』執筆のために、筆者はNPB球団のアナリストに取材をしていたが、3月の時点で全12球団が「ホークアイ」を導入していた。
著書では「12球団に既にホークアイがあるのだから、これをつないで『日本版スタットキャスト』を構築すべきだ」と書いたが、NPBと各球団はこの時期から、ホークアイの活用を企画していたようで、その第1弾が「リプレー検証のための映像センター」の設置、そして第2弾が「NPB+」だったようだ。筆者のようなライターにとっても、大いに利用価値のあるツールになりそうだ。

「NPB+」のアプリを使ってみると…
「NPB+」のアプリをインストールして、みずほPayPayドームのCSファイナル、ソフトバンク対日本ハム戦を観戦した。
十数秒のタイムラグはあるが、1球ごとに投手の球速や回転数、変化量などがわかるのは、新鮮な驚きだ。ソフトバンクのクローザー、杉山一樹の150㎞/h台後半の速球は速いだけでなく2300回転もある。縦の変化量も大きい。またフォークの落差も大きい。打者が空振りするのもわかる気がする。
日本ハム、右の強打者の万波中正が打席に立つと、スマホの中の小さな球場の左翼手のドットがフェンス際まで下がった。こういう形で守備シフトまでわかるのだ。
ただ、懸念材料はある。そもそも、日本の野球ファンが、こうしたデータをどこまで理解し、楽しむことができるか、だ。プロ野球中継でも、OPSや投手の回転数などなど「セイバーメトリクス」系のデータが紹介されることがあるが、一般のファンの反応は鈍い。また、これをうまく説明できる専門家も少ない。
今のところ「NPB+」は、説明がほとんどないが、どんなデータを見ることができるのか、そこから何がわかるのか、についての解説は最低限必要だろう。
また、個々のデータだけでなく、それを選手ごとに集計して、選手の特性や能力などの情報を発信していく必要があるだろう。
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