1分で2000個完売!「人気ベーグル屋」営む"夫婦の正体"。自宅でベーグル作りを独学で習得→店を開くも1日4人しか客が来ず…。逆転人生を聞いた

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絹子さんと「店名には花の名前を」と話し合い、アカシアベーグルとつけた。アカシアという言葉が出てくるちあきなおみの歌の『星影の小径』からとった。

1993年にリリースされた歌で、ずいぶんと渋いチョイスながら、「店名を考えている時にたまたまその歌の歌詞が浮かんだから」だそうで、特にこの歌に思い入れはないと笑う。

お客さんが1日4人しか来なかった日

2018年1月7日、アカシアベーグル、開店。深田さんは当初の予定通り、会社員を続けながら日曜にだけオープンすることにした。もし、箸にも棒にも掛からなかったら、すぐに撤退するつもりだった。

初日、店頭に並べたベーグルは「3種のナッツとクリームチーズ」「ホワイトチョコレートとブルーベリーとアーモンド」など9種類、計50個。「ずいぶんたくさん作れるようになったな」と感慨深く感じていたという。

それがすべて売れて、存在が口コミで広がり、あっという間に人気店……という流れにはならなかった。会社員生活に限界を感じていた深田さんは、早く辞めたい一心で、営業日を段階的に増やしていった。

同年9月いっぱいでの退職を決め、有給休暇を消化しながら週4日営業に。そして11月からは週5日、お店を開いた。その頃、唯一にして最大の問題は、お客さんがまったく来なかったことだ。

「今思えば、お店のインスタで告知するだけで、チラシ配りとかなにもしていなかったから、人が来るわけないですよね。でも当時はそれがわかっていなくて、落ち込んでいました。雨の日なんて、11時から19時までお店を開けて、お客さんが4人しか来ない日もありましたね。多い日には30個ぐらい余ったベーグルを持ち帰って、自分たちで食べるしかなくて、それはつらかった」

ベーグル専業になった11月の売り上げは約57万円で、1個300円(当時)のベーグルがひと月で1900個弱売れた計算だ。家賃や材料費などを除くと、夫婦ふたりで食べていける金額ではない。12月も、年が明けてからも、お客さんが増える予兆すらなかった。

「ダメなら撤退」が頭によぎっていた深田さんは、ここで新たな手を打つ。

「ユーチューブで、インスタを使ったマーケティングについてずっと聞いていました。あと、1年間、専門家が毎月アドバイスをくれるというので、商工会の経営診断を受けたんですよ。売り上げ見てもらって、もっと単価を高くしたほうがいいとか、ABCテストをして売れる商品をもっと作ったほうがいいとか、値下げは絶対にするなとか、基礎から商売のやり方を教えてもらいました」

商売未経験で店を開いた深田さんにとって専門家のアドバイスはどれも納得いくもので、できる限り取り入れた。そこから一気に売り上げが上向いて……ということにもならない。

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