1分で2000個完売!「人気ベーグル屋」営む"夫婦の正体"。自宅でベーグル作りを独学で習得→店を開くも1日4人しか客が来ず…。逆転人生を聞いた

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2019年夏のある日、深田さんと絹子さんは工房で言葉少なにうなだれていた。灼熱の太陽が照り付け、お店の前は誰も歩いていない。ここ数日、同じような状況が続いていた。

消費者は暑い時期にはサッパリしたもの、冷たいものを求めるようになり、パンが売れなくなる。それはさまざまな調査でも明らかになっており、ベーグルも同様だ。

頭ではわかっていても、自分が作ったベーグルが大量に余り、絶対に避けたいと思っていた廃棄をせざるを得なくなると、「自分たちの商品が悪いのかも」と考えてしまう。売り上げが絶不調だった夏、深田夫婦は話し合った。

「年越すまで同じような状況が続いたら、もうやめよう」

まだうだるような暑さが続き、客足もまだらだった9月、商工会の経営診断で専門家から「ミッションを決めたほうがいい」と助言を受けた。

ミッション? 深田さんがベーグル店を始めたのは「ほかの仕事と比べて、一番やっていけそう」と感じたからで、当初、特に強い思い入れはなかった。しかし、売り上げの低迷が続くなか、どうにかしようともがいているうちに、その軽い考えは消えていた。

自分たちはなぜベーグルを焼くのか? そうすることでなにを目指しているのか? 

初めて夫婦で話し合った。廃業するかしないかの瀬戸際だったこともあり、その時間は次第に熱を帯びた。そうして出てきた言葉が、「ベーグルに楽しさを!人生にワクワクを!」。

「ベーグルを通じてみなさまの人生をワクワクさせたい」という思いから生まれた、アカシアベーグルのミッションだ。

目指すべきところが決まると、雲が晴れたような気持ちになった。そこで、吹っ切れた。

「僕らも、楽しくやろう!」

コロナ禍で売り上げが急伸

ベーグル
アカシアベーグルのミッションは「ベーグルに楽しさを!人生にワクワクを!」(筆者撮影)

秋が深まり、涼しくなってくると少しずつお客さんが増え始めた。とはいえ、それも「夏に比べれば」という程度で、売り上げは赤字。貯金を取り崩しての生活が続いていた。

そして、廃業するかどうかを決める運命の12月、異変が起きる。なにか特別なことが起きたわけでも、仕掛けたわけでもないのに、お客さんが増え始めたのだ。視点を変えれば、ユーチューブで学んだマーケティングや専門家からのアドバイスを地道に実践してきた積み重ねが芽を出したともいえる。

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