1分で2000個完売!「人気ベーグル屋」営む"夫婦の正体"。自宅でベーグル作りを独学で習得→店を開くも1日4人しか客が来ず…。逆転人生を聞いた

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この方法により、酵母によってゆっくりと小麦の糖分が分解されることで、生地がしっとりもちもちになるとされる。前日から生地を作り置きできるため、当日に生地を作るよりも時間に余裕ができるというメリットもある。

お店を開くには、味だけではなく作業効率も重要なポイントだ。納得できる味のベーグルをブレなく、計画通りに作ることができるようになり、深田さんが「そろそろお店を出そう」と動き始めるまでに、気づけば2年が経っていた。

パン屋に比べると圧倒的に安い開業資金

それにしても、この2年間、一度も修業しようと思わなかったのだろうか?

「修業しようかと考えたこともありました。でも、会社に行きながら修業するのも大変だし、退職してから修業するのも大変だし、その頃は人間関係にストレスを感じていたから、修業に行くのはなんだかちょっと怖いところもあったんですよね」

修業に行かなかったというより、修業に行けなかった深田さん。それでも開業しようというのだから、家族や知り合いに太鼓判を押されたのかと思ったら、それも違った。

「みんな、おいしいって言ってくれるんですけど、お店を出した方がいいよとか、そこまで言われたことはなかったですね。自分たちがおいしいと思えたというだけです。実家の家族には、開業することすら話しませんでした。2年ぐらい黙っていましたね(笑)」

思わず、「大胆ですね」と漏らすと、深田さんは苦笑した。

「僕はすごく慎重派なんですよ。でも、この時だけは本当に根拠のない自信みたいなものがあって。なんの経験もないのに、よくやったなぁと思いますね」

絹子さんは開業を決めた時、両親に報告した。その際、父親からは「素人にお店なんてできるわけがない」と言われ、なにも反論できなかったという。

「私も『確かに』と感じたので、やるから見ててよと啖呵も切れないし、じゃあやめるよとも言えず、黙って流すしかなかったですね」

最終的な決断のきっかけは、現在の店舗として使っている物件をネットで見つけたこと。武蔵小金井駅から徒歩10分強、路面に面したその物件は耳を疑うような破格の家賃で、深田夫婦の背中をグイッと押した。

開業にあたり、自宅で使っていたオーブンレンジのほかに新たに用意したのは業務用オーブンと業務用の冷蔵庫、ニーダーだ。通常、ホイロを使う発酵に関しては、オーブンレンジの発酵機能で代用した。内装にもお金をかけず、総額300万円程度で済んだ。ちなみに、パン屋を開業するには1000万円前後必要とされているから、ベーグルの初期投資の少なさがわかるだろう。

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