1分で2000個完売!「人気ベーグル屋」営む"夫婦の正体"。自宅でベーグル作りを独学で習得→店を開くも1日4人しか客が来ず…。逆転人生を聞いた
もうひとつ、大きな気づきがあった。
「ある人気店は、夫婦でやっていました。ほかにも駅から離れたところにある小さな工房で、ふたりぐらいでやっているお店が多かったんですよ」
このふたつの発見は、会社員として悩みを深めていた深田さんを大きく揺さぶった――。
職場の人間関係に疲れて
ここで深田さんの歩みを振り返ろう。石川県加賀市出身で、大学進学の際に上京。授業そっちのけで自転車部に熱中した結果、大学4年生の時に中退せざるを得なかった。
学生の頃から続けていたホテルの配膳のアルバイトを2、3年続けた後、派遣社員としてシステムエンジニアの仕事を得る。パソコンをいじるのが好きだったこともあり、未経験で始めた仕事にもすぐに馴染んだ。
「ちゃんと就職しなきゃ」と不安に感じつつ、その時の稼ぎで生活ができるから、「まあいいか」と後回しにしてきた深田さんが、気持ちを入れ替えたのは、29歳の時。
絹子さんと出会い、2006年に結婚。これを機に正社員を目指した深田さんは、故郷の加賀市に戻り、ショベルカーなど建機の組み立て工場を持つ会社で生産管理の仕事に就いた。
しかし、東京出身の絹子さんが加賀市での生活に馴染めなかったこともあり、ふたりで再び東京へ。カメラに使う光学製品を作る会社に転職し、システムエンジニアに戻る。
この時、深田さんは34歳。定年まで会社員として働くことになんの違和感も抱いていなかった。しかし、入社から7、8年経つ頃には、「早く辞めたい」と願うようになる。
「パワハラ気質の上司がいたりして、職場の人間関係に疲れてしまって。この仕事をずっと続けるのは無理だなと思うようになりました。でも、どこに転職したって人間関係の問題はありますよね。それで、なにか自分でできることを探すようになったんです」
この時期に絹子さんとベーグルを食べ歩いていた深田さんは、ふと閃いた。
「もちもちの和ベーグルを作れば、自分たちの生活費分ぐらいは売れるんじゃないか? 僕らが見てきた専門店のように小規模にやれば、リスクも少ないのでは?」

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