新iMacの画面が、仕事の効率を上げるワケ iMac Retinaモデルは何がスゴイのか

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筆者は10月上旬に行われたクリエイティブの祭典、Adobe Maxに参加してきた。ここでひとつ驚かされたのは、これまで「Mac=クリエイティブ」というイメージが強かったが、すでにこれは正確ではないことがわかった。

マイクロソフトがAdobe Maxの大口スポンサーに入っていたことを差し引いても、アプリのパフォーマンスの最適化の面や、タッチ操作のサポートという点で、アドビ社のアプリのメインストリームは、Windowsプラットホームへとシフトしているトレンドを見出すことができたからだ。

ただ、今回のiMac 27インチモデルは、5Kディスプレー+P3というディスプレーの品質を考えると、税別20万8800円は破格の値付けと見ることができる。

特にディスプレーはクリエイティブに携わる人にとって重要な要素であり、品質の良いディスプレーを備えた新しいiMacの価格が20万円から購入できる点は魅力的に映るのではないだろうか。ここでひとつ、一定以上の性能を求めるユーザーにとっては、Macは高いというイメージが融けつつある。

また、もう1つ、Macに対して抱いていた印象もまた、崩れつつある。それは、Macはビジネスに向かない、というアイデアだ。

高い生産性はMacを押し上げる材料

ここで再びMicrosoftが登場するのだが、Mac向けにリリースされたOffice 2016は、Windows版のOffice 2016より先行してリリースされており、筆者としてはこれまでで最も良い出来と評価している。

その上で、iMacが搭載するOS X El Capitanは、広いディスプレーを分割し、2つのアプリに集中して仕事を進めることができる。

たとえば、Excelで表を作ってPowerPointの文書やスライドにまとめる、Evernoteのメモを見ながらWordにまとめる、ウェブブラウザを見ながらリサーチ資料をEvernoteにメモするなど、2つのアプリを組み合わせることで、高い生産性を追求できるようになった。

画面分割はWindowsでも利用できたが、広い高精細ディスプレーでのビジネス文書作成は非常に快適で、決して「ビジネスはWindows」という印象に固まる必要がないことが体験できた。この点は、クリエイティブユーザーよりも多くのビジネスユーザーを取り込むチャンスを、Macプラットホームにもたらすことが考えられる。

日本でもMacをビジネスに利用する人々は増えているが、爆発的なトレンドを起こすのは難しい。銀行のオンラインバンキングや社内システムが、Macをサポートしない例が多いためだ。結果的にWindowsが必要ならば、始めからWindowsパソコンを導入しよう、という評価が現実的な選択肢になる。日本は、その意味では、まだWindows王国が崩れていないのである。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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