代々木上原は女が37歳になると選ぶ街だった この街は、「心の健康な女性」が多い
女性の人生は、なかなかに生きづらくて、暗黙の幸せの定義が蔓延しているんです。未婚のときは、結婚することが女の幸せ、結婚したら、子供を産むのが女の幸せ……その定義の素地があり、子供を産めるリミットだってある。となれば、女性たちは、個々人に最適化された欲求に耳をすますことなく、閉店間際、蛍の光が鳴りだしたスーパーや、タイムセールの焦りのごとく、思考が停止してしまうのも仕方ないと思います。
皆が持っている物を欲しがって足並みそろえる
それに、女性は小さい頃から、皆が持ってる物を欲しがって足並みそろえてきたと思うんです。シルバニアファミリーやリカちゃん人形、たまごっちや、プラダの黒いナイロンバッグ、シャネルのマトラッセ……友達が皆持ってるから、母にねだったみたいに、子供にしても、そういう側面があるんじゃないかなと。
そう。私は、本当に、子供が欲しいのでしょうか?
悩んだ結果、彼と距離をおくことにしました。「離婚」じゃなくて「別居」です。別居を選んだのは、端的に言うと、白黒はっきりさせる労力がなかったからですね。孤独に向き合う覚悟も引き受けたくないし、一緒にいることで生まれる争いも抱えきれない私たちは、とりあえず、子供の問題と、お互いの価値観の違いにふたをして見て見ぬふり。別居がいちばん楽だったんです。
別居したお祝いに、と茶化して、前職の会社の同期の男友だちが代々木上原の『enboca』に誘ってくれたんです。代々木上原は初めてでした。あぁ、なんかこの空気、いいなって素直に肩の力が抜けて・・・そして、三茶の時代の懐かしい同期の顔見たら、お酒飲みながらふと涙腺崩壊です。
けど、泣けてくるのに、寂しい気持ちにならなかったんです。ビオワインを飲んで、おいしい野菜がふんだんに使われたピザを頬張ったら、悲しいんだけど、おいしくて泣きながら笑っていました。その子「泣いたり笑ったり忙しいやつだな」って。あの夜の、悲しいんだけど、温かい感じは今でも覚えています。
代々木上原は、三軒茶屋とも恵比寿とも銀座とも、豊洲とも全然違います。空気がゆったりと流れていて、住んでいる人たちは、落ち着いていて肩の力が抜けている感じ。子育ての街というよりは、大人たちが遠慮しあいながら、一定の距離感と優しさで暮らしている街ですね。詮索されたくもないし、かといって知らんぷりも寂しい。今の私にとっては最適な街です。