葛飾区の「老舗和菓子店」運営会社が廃業した"意外な背景"。原材料高騰に加え、埼玉県八潮市の事故影響も…。2025年の「休廃業・解散件数」の行方は

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帝国データバンク

前年からの増加率が最も高いのは「サービス業」(5884件、前年比20.3%増)で、「製造業」(2289件、同20.2%増)とともに前年同期比で増加率が2割を超えた。

業種を細かく見ると、前年から最も増加したのは「生命保険代理店」(28件、154.5%増)で、前年比2.5倍の大幅増加となった。生保代理店では、複数の保険商品を比較する「保険ショップ」業態で多店舗展開を行う業者が台頭し、Web窓口と来店型ショップの双方で顧客を囲い込むビジネスモデルが台頭している。

生命保険の契約手法も、インターネット経由で直接契約を結ぶ「ダイレクト型」が浸透するなど販売チャネルが多様化し、対面を主軸とした営業を主体とする中小代理店では厳しい競争にさらされている。

近時は生損保業界で不正が相次ぎ発覚し、法令順守への厳格な対応も求められるようになり、十分な契約数の確保が厳しくなったことも、中小零細の保険代理店で休廃業・解散が急増した要因になったとみられる。

このほか、「建設用金属製品製造」(35件、133.3%増)や「靴小売」(29件、123.1%増)、「畳小売」(23件、110.0%増)など、製造業や小売・サービス業で大幅に増加した。

“前向きな廃業”が増加する可能性あり

12年ぶりの年間1万件台が見込まれる企業倒産(法的整理)と同様に、2025年の休廃業・解散も増加傾向で推移している。ただ、企業倒産に比べると休廃業・解散の増加率は高く、企業の「退出」がさらに加速している実態が浮かび上がる。

平時であれば安定した事業継続が可能な「資産超過」の割合は過去最高となったが、損益面で「黒字」の割合が低下する傾向が前年に比べて強まっている。余力があるうちに事業をたたむ動きはさらに広がっていくだろう。

足元では人手不足への対応や後継者の選定・確保など、種々の経営課題が山積している。こうしたなかで、「自力での事業継続・再建」か「円満な廃業」か、企業存続をかけた重要な経営判断を迫られている中小企業は少なくない。

政府による中小企業支援の軸足も「資金繰り」から、抜本的な「経営改善・事業再生」へとシフトしており、今後はM&A等を活用した「前向きな廃業」の動きがさらに浸透していくものとみられる。

【もっと読む】「今夜の会食で予約していたのに、当日に倒産するとは・・・」 高級中華料理の名門《聘珍樓》倒産の一部始終 “3度目の倒産”は必然か では、帝国データバンクの内藤修氏が、老舗中華料理店の倒産の顛末について詳細にレポートしている。
内藤 修 帝国データバンク 情報統括部 情報編集課長

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ないとう おさむ / Osamu Naito

2000年入社。本社情報部、産業調査部、横浜支店情報部長、情報統括部 情報取材課長を経て、2023年10月から現職。24年間で約3000社の「倒産した会社」と「倒産しそうな会社」を取材。入社以来一貫して、倒産企業の取材、倒産動向のマクロ分析とともに、注目業界の動向やトピックをまとめた調査レポートの作成を担当。専門は、倒産動向分析、企業再生研究。横浜市出身。

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