虎ノ門ヒルズ《森ビルのフードコート》で過ごす"超上品な時間"。「ヒルズ族価格」に圧倒されながら、豪奢な"未知の味"に挑戦してみた!

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T-MARKET
東京都港区にある「T-MARKET」を訪問しました(筆者撮影)
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フードコート愛好家の鬼頭勇大さんが、さまざまな街のフードコートを訪れる本連載。
今回は、東京都港区の虎ノ門ヒルズにある「T-MARKET」を訪問します。

港区といえば「ヒルズ」密集地帯。「アークヒルズ」に「愛宕グリーンヒルズ」「元麻布ヒルズ」や「六本木ヒルズ」、「オランダヒルズ」に今回の「虎ノ門ヒルズ」、さらに「麻布台ヒルズ」などがそびえたつ。

案内板
近隣には「ヒルズ」が密集している(筆者撮影)

これらを手掛けるのは、言わずと知れた森ビルである。これまでイオン系や三井系のららぽーとにあるフードコートは扱ってきたが、森ビルが手掛ける施設に入っているフードコートは初訪問。港区という立地もあり、果たしてどのような空間とフードが待ち受けているのか。

国際色も豊かなビジネス街の虎ノ門・霞が関エリア

区域全体で7.5ヘクタール、延べ床面積は80万平米の虎ノ門ヒルズは、大きく4つの棟で構成される。それぞれ段階的に開業し、トップバッターとなったのは2014年6月の「森タワー」。そこから「ビジネスタワー」「レジデンシャルタワー」が続き、2023年10月に「ステーションタワー」が加わったことでようやく完全体となった。

森タワー
虎ノ門ヒルズとして最初に開業した森タワー(森ビル公式サイトより)

虎ノ門ヒルズは「国際新都心」「グローバルビジネスセンター」というコンセプトだ。虎ノ門・霞が関エリアといえば、かつては「日本で最初の超高層ビル」(諸説あるが)とされる霞が関ビルディングが話題を呼び、官公庁や大使館などの施設も含めて都内でも有数のオフィス街。そうした立地特性を生かしつつ、森ビルならではの意匠を凝らして登場したのが虎ノ門ヒルズである。

虎ノ門ヒルズの誕生は、同エリアに対するオフィス街以外としてのニーズを開拓するきっかけにもなっている。かつて虎ノ門ヒルズの企画に携わった森ビルの担当者に取材したことがあるが、いわく「以前は平日こそ賑わうが、土日は閑散としたもの」だったという。

しかし、名だたる飲食店を誘致した虎ノ門横丁をはじめ、虎ノ門ヒルズではビジネスユースにとどまらない活用法を提案したため、開業以降は見違えるように土日の人出が増えたと嬉しそうに語っていた。

「フードコート」をうたっていないが実態は……

今回訪問する「T-MARKET」も、間違いなくそうした虎ノ門エリアの週末利用を下支えしている。

T-MARKETがあるのはステーションタワーの地下2階。広々とした「ステーションアトリウム」という駅前広場に隣接している。

ステーションアトリウム
非常に開放的なステーションアトリウム。ここが地下とは思えない(筆者撮影)
T-MARKET
公式的には「フードコート」ではない、T-MARKET(筆者撮影)

ちなみに、公式によればT-MARKETは「飲食・食物販・物販から、サービス・イベントスペースまで、個性的な27店舗が有機的に共存する、食を中心としたコミュニティ」。森ビルらしい、強いメッセージ性を感じる。

要は決してフードコートとはうたっていないわけだ。とはいえ、区画の中にある全600席超のうち140席ほど「T-MARKET PUBLIC TABLE」と名付けられた座席があり、T-MARKET内にある飲食店のフードやドリンクを楽しめる。各座席にはモバイルオーダー用のQRコードも置いてあり、給水機もあるということで、フードコートといっても差し支えないだろう。

T-MARKETのマップ
T-MARKETのマップ(筆者撮影)

座席数はそこまで多くないものの、中に入ると非常に席種が豊富である。通常のテーブル席やソファ席、長机などがあった。この日は閉ざされていて中を見られなかったが、室料はかからず12人まで利用できる個室もあるという。

ビル内
さすが森ビル、とうならされる空間が広がる(筆者撮影)
ソファ席
ソファ席も充実(筆者撮影)
ユニークなソファ席
こんな席も(筆者撮影)
壁際の2人掛け席
壁際の2人掛け席(筆者撮影)

醸造所に角打ち、立ち食い寿司……歩くだけ、見るだけでも楽しめる

店舗構成は、ビジネス街とはいえ平日のランチタイムにビジネスパーソンを狙う――という雰囲気は感じず、平日の夕方以降、もしくは週末のニーズを見込んでいる感じが漂う。

目を引くところだと、ステーションアトリウム側から見て最奥部にある「dam pub」。クラフトビール醸造所を併設しており、大きなタンクやずらりと置いてあるビアグラスが見ていて楽しい。

クラフトビール
もはや昨今のお洒落系フードコートにおいて必須装備となりつつあるクラフトビール(筆者撮影)
クラフトビール
さながら工場見学?(筆者撮影)

同様にウイスキー中心のバー「TRAD WHISKY BOTTLE BAR DEN TORANOMON」やヨーロッパのワインやチーズを提供する「LAMMAS / ISTINTO」も、ショーケースやボトルが興味を引く。

フードコート
歩いているだけでも楽しくなれるフードコートである(筆者撮影)
LAMMAS
単に私が酒好きなだけかもしれないが……(筆者撮影)

中には立ち食い寿司や「角打ち」を銘打つ店舗などもあり、フードコートとしてだけでなくもちろん通常の飲食店としても利用できる。全体的に、フードコートと飲食店が混然一体となったテーマパークらしい雰囲気を感じて楽しい。

角打ち KAN
大田区にある酒屋が直営している「角打ち KAN」。午前11時から角打ち営業をしている(筆者撮影)
立喰すし魚河岸 山治
「魚河岸 山治」として初の寿司店である「立喰すし魚河岸 山治」。立ち食いということもあってか、値段もそこそこ(筆者撮影)

他ではお目にかかれない「専門店」が多い

あらかたチェックを終え、席に着く。QRコードから各店舗のメニューをあらためて確認して、さてどれにしようか。

数ある魅力的な店舗から、今回まず選んだのは「ヒツジパブリック」。ミシュラン3つ星料理人である米澤文雄氏が手掛ける、羊肉にフォーカスしたカジュアルビストロである。

ヒツジパブリック
カジュアルビストロの「ヒツジパブリック」(筆者撮影)
看板
ミシュランで星を獲得した人たちが手掛けるなら、間違いないだろう(筆者撮影)
メニュー
さまざまなメニューをそろえている(筆者撮影)

昼はハンバーガーが中心であり、ラム肉以外では和牛を使った「プレミアム神戸ビーフバーガー」のダブルが6600円と、港区そしてヒルズらしい金額なのが目を引いた。とはいえ今回はラム中心の店ということで「ラムと揚げ茄子のアリッサバーガー」をチョイス。

加えて、これまた珍しいイスラエル料理の店「Ta-im」でも注文してみよう。大使館が多いエリアということも影響しているのか、T-MARKETは国際色も豊かである。こちらではピタパンとポテトが付いた「フムスボロネーゼプレート」を選ぶ。

Ta-im
イスラエル料理を提供しているTa-im(筆者撮影)

そしてもう一品、少しでも優雅な港区ヒルズ族気分に浸りたく、調子に乗ってdam pubでIPAも注文する。

注文はモバイルオーダーで、電話番号を入力。メニューができあがるとショートメッセージで通知が来る。

「ヒルズ族価格」と「複雑な味」に気圧される

まだ昼前でそんなに混んでいなかったこともあり、あっという間に料理が到着した。

ヒルズ族セット
名付けて「ヒルズ族セット」(筆者撮影)

それにしても、ビールがIPAとはいえ1000円超でこの量とは。質より量を重んじる業突く張り人間からすると物足りない感はあるが、郷に入っては郷に従えなので口をつぐむ。別に飲んだくれるわけでもないし。

グラス
グラスのギリッギリまで入れてほしかった(筆者撮影)

気を取り直して、食べよう。イスラエル料理の方から。

フムスボロネーゼのプレート
2番人気だというフムスボロネーゼのプレート(筆者撮影)

イスラエルやトルコなどで食べられている、豆のペーストにさまざまな調味料などを混ぜたフムスのボロネーゼは、意外とフムスの塩味やパンチが効いている。

フムスボロネーゼのプレート
シンプルながら締めるところはしっかり締める、そんな感じ(筆者撮影)

これまた中東名物、中に具を挟んで食べるピタパン。ボロネーゼフムスと、付け合わせの野菜を挟んで食べてももちろんうまい。ポテトもそうだし、全体的に素朴な感じのプレートである。

ピタパン
これがピタパン(筆者撮影)
具を挟んだピタパン
挟んで食べるとこんな感じ(筆者撮影)

反対に香り立つのがラムのハンバーガーだ。

ハンバーガー
揚げ茄子などたくさんの具材が乗っている(筆者撮影)

バンズをしっかりかぶせてかぶりつくと、香ばしい風味とラムの香りが鼻に抜け、最後にハーブがすっきりさせてくれる。ラムと茄子の組み合わせは初めて食べたが、悪くない。というか、めちゃくちゃおいしい。

聞きなれない「アリッサ」というのは北アフリカのスパイスで、豆板醤のようなものらしい。そこまで辛さは感じず、ラムの味と香りをしっかり引き立ててくれているような、そうでもないような……。ヒルズ族ご用達の複雑な味わいは、まだ私には早いようだ。

ハンバーガー
ナイフとフォークなんか使わず、かぶりつくのがハンバーガーの醍醐味(筆者撮影)

最初はビールの量に戸惑ったが、フードはいずれも2000円弱と考えれば、べらぼうに高くはない。席の居心地も良いし、なかなか完成度の高いフードコートではなかろうか。と満足感に浸っていると、スタッフの人が食べ終えた皿を下げてくれた。最近はこういうサービス付きのフードコートが増えている。

ちなみに夜は、メニューの提供もスタッフがしてくれるのだとか。座席の予約は昼も夜もできて、ふらっと立ち寄るのも良し、めかしこんで楽しむもよし。1粒で二度おいしいフードコートである。

【もっと読む】大阪・梅田《フードコート激戦区の絶対王者》「ウメダフードホール」が楽園だった。美食からガッツリ系まで揃う《地下のオアシス》を大満喫! では、大阪・阪神百貨店にあるフードコートを、フードコート愛好家の鬼頭勇大さんが探訪、豊富な写真とともにその魅力をお伝えしている。登録すれば本連載の最新記事が届くこちらの「著者フォロー」ボタンから。
フードコート連載
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鬼頭 勇大 フリーライター・編集者・フードコート愛好家

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きとう・ゆうだい / Yudai Kito

フリーライター・編集者・フードコート愛好家。熱狂的カープファン。ビジネス系書籍編集、健保組合事務職、ビジネス系ウェブメディア副編集長を経て独立。飲食系から働き方、エンタープライズITまでビジネス全般にわたる幅広い領域の取材経験がある。

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