三谷幸喜の作る映画は、どうして面白いのか フジ映画事業局長、三谷作品の魅力を語る

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(C)2015 フジテレビ 東宝

――「王様のレストラン」などもそうですが、閉じられた空間で展開される物語、軽妙な会話劇など、彼の演劇的な資質がテレビに合っていたということはあるのでしょうか。

そう思います。ただ、これは一緒に仕事をしていくうちにわかったことですが、彼にとっての空間というものは、必ずしも物理的に閉じていなければならないわけでもない。

たとえば『ザ・マジックアワー』という映画では、巨大なセットの不思議な街を作りましたが、あの街自体が部屋みたいなものだったと言えます。「合い言葉は勇気」というドラマに登場する村もそうです。そういう意味で閉じているというか。ある世界の中に境界があり、そこからはみ出して何かをやるのは、ルールとして反則なんじゃないかと思っている節さえある。彼はその中ですべてを成立させてやるという気持ちでいるような気がします。それは面白いなと思いますし、僕もそういうのが好きですからね。

僕はテニスの壁打ちの壁のような存在

三谷作品における石原さんの役割とは?

――三谷作品における石原さんの役割はどのようなものなのでしょうか。

今でも僕は製作者の1人ではありますが、最近は直接三谷さんと向き合うプロデューサーではなくなっています。もちろん今でも電話がかかってきたりします。まあ、三谷さんにとってはテニスの壁打ちの壁みたいな感じですかね。とにかく相談の電話がかかってきます。

――どんなことで電話がかかってくるのでしょうか。

たとえば『古畑任三郎』の時、話の展開について、「途中にAとBという2つの選択肢があるのですが、どちらがいいですか?」と電話がかかってきたことがありました。いろいろとお話を聞いて、「Aの方がいいじゃないですか。そうすればこういう感じで面白くなると思いますよ」と返事をするとしますよね。すると「わかりました」と言って電話を切る。しかしその後、B案の方で台本を書いてくるんですよ(笑)。でもそれがその時に話していたことよりもずっと面白い。

壁打ちというのはそういうことで、そもそも彼は僕に意見やアイデアなんて求めてなくて。壁に向かって球を打ちながら自分の考えをまとめていたんです。こちらとしては、果たして役に立っているのか?と思うのですが。でも、「石原さんとの仕事に入った時は、枕元に電話を置いてくれ」と言うので。自分としては、いらないのではと思うんですが、それでも世の中には壁の中にはいい壁と悪い壁があって。自分はいい壁になれればと思ってやっていました。(笑)。

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