――『ラヂオの時間』からは映画監督としてお付き合いするようになったわけですが。
(彼に映画の話をした時に)彼は自分を客観的に見ているというか。当時の自分がやれる中でお客さんを満足させられるのは、自分が過去に舞台でやってきたものだろうと。それなら演出的にもイメージが湧くという話をされて。なるほどと思いましたよ。それが『ラヂオの時間』になるわけです。舞台の演出はされていたので、あの舞台をもう一度成立させて、映像的にカメラに収めれば、映画としてきちんと成立するのではないかという計算があったのだと思います。
伊丹監督からの言葉
――初監督ということでプレッシャーを感じていたように見えました?
あの時、お亡くなりになった伊丹十三監督が現場に見えられたことがあった。その後、本人から聞いたのですが、とにかくあのビジコン(チェック用のモニター)の画面の中で起こっていることがすべてなんだから、何か変だと思ったら言えばいいし、いいと思えばいいんだと言われてすごく気持ちが楽になったとおっしゃっていましたね。それくらいに最初は監督をするのにプレッシャーがあったんだと思いますね。
――本作で監督作も7本目となりますが、監督としての成長はどのように見ていますか。
専門的に言えば、撮影のやり方や、カット割りの仕方などで変化はあるのだと思いますが、彼が提案する物語自体が三谷幸喜的なので。カット割りによる差よりも、彼の作る物語の方が圧倒的に三谷幸喜的なアイデンティティーを持っている、だから、あまり変わりがないような気がしているんです。確かなテクニックを持ったね、とか、手だれになったね、といった意見もよく聞くのですが、僕からすると、とにかく物語が三谷幸喜的面白さを持つことが重要。そういう意味では変わらないように感じます。最初から面白い、と言うか。
――『THE 有頂天ホテル』、『ザ・マジックアワー』、『ステキな金縛り』、『清須会議』とコンスタントにヒットを記録している三谷作品ということで、期待値も高くなっているのではないでしょうか。
もちろんヒットするに越したことはないのですが、本音を言うと、マネーメイキングのために何かを曲げてまでやってもらいたいとはまったく思っていないんです。三谷さんには自分が面白いと思うものを作ってもらいたい。三谷幸喜的でなくなるなら、三谷さんに頼む必要がないですし、それで当てたとしてもあまり意味がない。
――そういう意味で、最新作『ギャラクシー街道』がSFというのもだいぶ振り切った設定だと思うのですが。
そうですね。だいぶ前から企画は聞いていたのですが、基本はハンバーガーショップを舞台としたグランドホテル形式のストーリーなので、それは三谷さんがもっとも得意とするところなわけです。それを宇宙にしたというのが面白いところで。それは三谷幸喜的だなと思いましたね。
――フジテレビといえば、他局に先んじて30年以上にわたって、映画制作を推し進めてきた放送局として知られています。フジテレビにとっての映画の位置づけは?
正直言うと、テレビが以前より元気がないと言われている中、各局がこれまでの地上波の放送だけでなく、とにかくいろいろな事業にチャレンジしていると思うのですが、そういう中では映画がいちばん親和性が高い。テレビ局というのは、放送局でもあると同時に、映像制作会社でもあるわけです。人材も豊富なわけですから、この人たちの映像技術を有効に活用しない手はないだろうと思います。
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