「受け入れるべき。ただし、かつてのように」…五木寛之が看破した【外国人労働者問題】の本当の論点

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

そのディスカバー・ジャパンが一段落ついた頃、キャンペーンのプロデューサーだった電通の藤岡和賀夫さんが私のところに、「次のテーマとして、ほかに何か新しいアイデアはないですか」と相談にきました。

そこで私が提案したのが、年配の方は覚えていらっしゃるかもしれませんが、「エキゾチック・ジャパン」というテーマだったのです。エキゾチックとは「異国情緒がある」という意味です。

なぜ日本を表現するのに「エキゾチック」だったのか。それは、われわれが「日本らしい」「日本古来」と思っているものの中には、実は多分に「異国」が混じっているからです。

たとえば、京都の祇園祭(ぎおんまつり)。古都・京都において千年以上の歴史を有している伝統的な祭りですが、ビルの間の大通りを巡行する「山」や「鉾(ほこ)」を見れば、まさに異国の情緒があふれています。

山や鉾を飾るのは、中国製の緞通(だんつう)や綴錦(つづれにしき)、ペルシャやトルコの緞通、ヨーロッパ諸国製のタペストリー、インド製の刺繡(ししゅう)です。

また、高野山は真言密教の総本山であり、古くから日本仏教の聖地のひとつとされてきましたが、そこで祀(まつ)られる大日如来をはじめとした諸仏の多くは、インド起源の神様です。映画『男はつらいよ』の主人公・寅さんの故郷、柴又には帝釈天(たいしゃくてん)が祀ってあります。帝釈天もインドの神様です。

われわれがつい誤解してしまうのは、古きもの、歴史あるものを訪ねれば、そこに日本固有のものがあると思ってしまうことです。しかし、実際は違います。「日本古来」「日本の伝統」の表皮をむいていくと、現れるのはインターナショナルでエキゾチックな異国の姿なのです。

日本や日本人について考えるときも、こうした視点は重要です。ナショナルな面を見ると同時に、インターナショナルな面も見る。日本文化とひとくちに言っても、そこには様々なものが交錯しています。

主流は中国・朝鮮半島を経由した東アジアルートでしょうが、ほかにも南方系ルートもありますし、シベリアやロシアから来た北方系の文化も入っています。

日本人が持つ異文化の「消化力」

では、「日本はエキゾチックな国」という前提に立った上で、あらためて「日本とは何か?」と考え直してみると、どのような姿が浮かび上がってくるでしょうか。

次ページ考えるヒントは?
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事