さて、こんな状態の景気を政府はどうとらえているのか。今月14日、内閣府が発表した10月の月例経済報告は、「前月からの現状判断は下方修正、中長期の傾向を示す基調は緩やかな回復」などと、よくわからないことを言っている。素直に基調判断を下げれば良いところ、これから第2ステージに向かうアベノミクスにケチをつけるわけにもいかないと、苦しい説明を試みている。
方向を変えたアベノミクス
率直に言って、アベノミクス2.0が掲げた「新3本の矢」の評判はあまりよろしくない。とりあえず「一億総活躍担当大臣」という名称は、どこで聞いても褒める人がいない。が、このタイミングでアベノミクスが方向性を変えたことは、正しかったのではないかと筆者は考えている。
アベノミクス1.0のどこに誤算があったのか。確かにアベノミクスは円安・株高をもたらして企業業績を改善した。ところが企業収益は、賃上げや設備投資には向かっていない。だから個人消費は伸びないし、自律的な景気回復には至らない。企業経営者のマインドはなおも慎重だ。
筆者が地方の経営者相手に講演している際に、受ける質問はもっぱらこんな感じである。
「そうは言っても、国内市場はこれから確実に縮小しますよね」
「日本政府の財政破綻は、意外と近いのではないでしょうか」
この辺り、政府の思惑とは完全にすれ違っている。アベノミクスは「まずデフレからの脱却を」と考える。ところが「期待に働きかける」政策を採っていると、どうしても近視眼的になってしまう。
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