アベノミクス2.0の方向転換は正しい決断だ

金融政策の比重は低下、長期課題にシフト

総じて安倍内閣は、短期的な課題については機動的に取り組んできた。東京五輪招致の成功や、TPP交渉への参加と合意などは見事であった。その一方、財政、社会保障、エネルギーといった長期の課題は後回しにされてきた。

長期悲観マインドを変えられるか

ところが、「人々の期待に働きかける」というアベノミクス本来の趣旨を考えたら、中長期の見通しが暗いままで、家計が消費を増やしたり、企業が投資を決断したりすることは考えにくい。つまり、政府が「短期楽観」を強調すればするほど、民間が「長期悲観」に傾いてしまうという点に、アベノミクス1.0が抱えていた根本的な矛盾があった。

そこでアベノミクス2.0は、新たに「夢をつむぐ子育て支援」(希望出生率を1.8まで上げる)、「安心につながる社会保障」(介護離職ゼロ)などの目標を打ち出した。「政府は少子化や高齢化対策もちゃんと考えてますよ」と打ち出したわけである。もちろん、人口減少がすぐに止められるわけではない。が、今までのように無視しているよりはずっといい。

新しいターゲットが登場する一方で、金融政策に対するウェートは確実に低下した。以前に当欄でも書いた通り 、官邸は今以上の円安は不要と考えている。実際のところ、物価安定目標2%は達成されていないとはいえ、デフレからの脱却はかなり見えてきた。そして企業業績の改善という目標もほぼ成し遂げた。

次は企業に対し、儲けたカネを賃上げや投資に使わせることが必要になってくる。その目標は金融政策だけでは達成できない。したがって、アベノミクスは次のステージに向かわなければならない。リフレ派の皆さん、今までどうもご苦労様でした、ということになる。

最後にもう一言。

冒頭の鉱工業生産のニュースに対し、市場ではもっぱら「これで追加緩和の可能性が遠のいた」などと取り沙汰されている。しかるに日本銀行は、目先の景気よりも物価上昇率を重視しているはずなので、GDPが2期連続マイナス成長となってもさほど気にしないのではないか。

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