超難題「介護離職ゼロ」を実現するための方策 介護保険メリハリ運用と混合介護で打開せよ

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親の介護のために離職する人を減らすには、単純に介護施設を増やせば解決するというものではない。介護人材をいかに確保するかという問題に突き当たる(写真:Graphs/PIXTA)

「アベノミクス」第2ステージとして「新3本の矢」を打ち出した安倍晋三首相。その1つ、「安心につながる社会保障」の中で「介護離職ゼロ」という数値目標を掲げた。

その直後、政府は「介護離職ゼロ」に向けた具体策の1つとして、首都圏で不足する特別養護老人ホーム(特養)などの介護施設を増やすために、国有地を貸し出す方針を打ち出した。今後さらなる高齢化によって要介護者が急増すると見込まれる首都圏では、人口が稠密で介護施設が必要だとわかっていてもその建設用地の確保がなかなか難しい。

介護施設を増やすだけでは打開できない

そこで、首都圏にある国有地を民間相場の4分の1程度の賃貸料で貸し出し、入所待機者が多い特養の新設を促そうというものである。安倍内閣が年内にも打ち出す「1億総活躍社会」実現に向けた緊急対策に盛り込んで、来年から制度化したい意向だという。

介護離職とは、要介護状態になった親を身近で介護しなければならない事情で、これまでの勤務先で継続して就労できなくなったために離職することを指す。もし親が要介護状態になっても介護施設などに入れれば、子が親の介護に四六時中携わらずに済み、仕事も継続できる。そうした狙いもあって、介護施設の増設を促すことが介護離職ゼロの一助になるとみて打ち出したのだろう。

ただ、介護関係者からは、早くもこれでは打開策にならないとの否定的な見方が一部に出ている。というのも、目下、介護職員の人材不足が顕著だからである。介護施設を増設しても、そこで要介護者をケアする介護職員が十分に集められなければ、要介護者に十分なケアができなかったり、介護職員に過労を強いたりする懸念がある。

今後、要介護者が増えると見込まれる中で、介護施設を増設できなければ、自宅での介護が必要となり、介護離職を強いられる労働者が増える。しかし、要介護者をケアするのは介護職員である。介護職員の確保がままならなければ、介護施設を増設しても、介護の質や介護職員の処遇が悪化しかねない。

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