優先すべきは企業と家計の所得を増やすこと 法人減税に向けた明確な道筋がほしい

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株式市場では企業の質に注目した選別が進みつつある(写真:Joel/pixta)

10月30日(金)の金融政策決定会合で、日銀が追加緩和を打ち出すとの説が唱えられている。筆者はないと予想しているが、そう考える理由はいくつもある。近著『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』でもふれたが、ほかにも次のような理由が挙げられる。

・現在の消費者物価上昇率の低迷はエネルギー価格下落によるところが大きく、それで困る日本の企業や家計はほとんどない

・逆に、企業や家計に対するマインド調査では、円安による輸入コスト上昇に対する警戒が示されている

・中小企業には製商品を国内市場で売るがエネルギーや原材料は輸入に頼るところも多く、そうした輸入コスト上昇に対する警戒感は日銀や政府・与党にも寄せられていると推察される(10月19日の日銀支店長会議やさくらレポートにおける地方経済の状況報告に注目)

今は金融政策の出番ではない

そもそも、日銀が国債の買い取りで銀行システムにつぎ込んだ資金は、その先の融資の伸びがはかばかしくない(ひところより高まっているが)ため、あまり外に流れ出ていない。つまり、株式市場や為替市場に流れ込むことを期待できないのだから、株高や円安をもたらすことも想定しがたい。

短期的には、日銀が追加緩和するかしないかを無理矢理材料にして騒ぐ向きはあろうし、それにつけこんだ投機の売買が株価を振れさせることはあるだろう。しかしそれだけのこと。中長期的な景気や株価の動きを、今月末の追加緩和の有無が決定づけるということは考えにくい。

次ページ肝心の経済政策だが…
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