そうして婚活をスタートさせたのだが、やすおは40代後半、50代の女性にはいっさい申し込みをかけることはなかった。また、そうした世代の女性から申し込みが来ても、受けることはなかった。
結局、1年間活動したものの思うような成果は得られず、やすおは54歳で退会していった。
子どもを授かる結婚から、人生をともに歩むパートナーを探す結婚へと考え方をシフトすることはできず、独身で生きていく覚悟を決めたようだ。
実家の土地や墓を守ってほしい
きみえ(52歳、仮名)は4年前に離婚をした。長男はすでに社会人、長女も来春に大学を卒業して、ようやく自立が見えてきた。そこで、自身の再婚を考えるようになった。
婚活を始めていくつかのお見合いを重ねたものの、なかなか思うような結果を得られなかった。自分が気に入った相手からは断られ、逆に相手が好意を寄せてくれても、彼女の気持ちが動かなかったのだ。
そんな状況が続く中で、いちろう(55歳、仮名)とは、見合いのときから話が弾み、仮交際に入ってからも順調に関係を育んでいた。
いちろうもまたバツイチで、前の結婚では女の子を授かっていた。しかし離婚の際、親権は元妻が持つことになり、その後まもなく彼女が再婚したため、幼い娘と会うこともなくなっていた。
現在、いちろうは都内のメーカーに勤めているのだが、出身は地方で、実家は代々続く地主の家柄だ。先祖の墓もそこにあり、その土地や墓を守ってくれる子どもの存在を願い、53歳のときに婚活を始めたのである。
しかし、30代女性に申し込んでも、まずは受けてもらえない。
年月が過ぎていく中で、同世代の女性で自分の好みのタイプからの申し込みならば、それを受けるようにもなっていた。その1人がきみえだった。
映画に行ったり、美術館や水族館を訪れたりと、順調にデートを重ねるうちに、きみえのいちろうへの想いはますます深まっていった。
「まさか婚活で、こんなに好きになれる人に出会えるなんて思いませんでした」
面談で交際の様子を尋ねると、きみえは頬を赤らめ、うれしそうに語っていた。しかし、数日後、予想もしなかった展開が訪れた。
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