ドラマでは、ますますイジメが酷くなったという話になっているが、実際のところ、進物番には男前が多かった。大名や旗本からの献上品を将軍世子のもとに運ぶ役割を担い、高価なものを扱うため、家柄や見栄えもよい者が選ばれることが多かったのだ。「べらぼう」での平蔵はナルシストなキャラクターとなっているが、それなりに裏づけがあるといえそうだ。
そんな平蔵に転機が訪れたのは天明7(1787)年。田沼意次に代わって、松平定信が老中になった年のことである。
平蔵は42歳で、火付盗賊改の役を命じられることとなった。江戸市中で放火や盗賊、博打を取り締まるのが任務となる。最初は臨時の当分加役(とうぶんかやく)で、43歳のときに本役を務めている。ここから平蔵は水を得た魚のように活躍することとなる。
盗賊をとらえて治安を向上させた
「長谷川宣以のようなものを、なんで加役に仰せ付けるのか」
平蔵が火付盗賊改の加役に任命されたときは、同僚からそんな不満が上がったという。だが、これまでの進物番とは違い、火付盗賊改は仕事の成果が明確である。犯罪を取り締まることで、どんな批判ややっかみも封じられると、平蔵は張り切ったことだろう。
平蔵が考えたのは「提灯作戦」である。火事が出れば、目白台の長谷川組の組屋敷から現場に駆けつけることになるが、火元の場所によっては時間がかかってしまう。そこで、平蔵はあらかじめ、同心全員に長谷川家の家紋である「左藤巴」を描いた高張提灯を渡しておいた。
すると、火元にもっとも近い場所にいる臨時の同心が、その高張提灯をもって現場へとりあえず駆けつける。町の人々からすれば、「火事となればどんな場所でも平蔵が現れる」と錯覚するというわけだ。老中首座・松平定信の家臣・水野為長が記した『よしの冊子』で次のように書かれている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら