シャープを救った台湾企業、鴻海(ホンハイ) サムスン潰しへの野望
売上高9兆6361億円、グループ従業員数96万1000人。スマートフォン、パソコンなどの年間生産台数は133億4078万台(2011年12月期)--。あらゆる日本の電機メーカーを規模で大きくしのぐ台湾企業が、とうとう表舞台に躍り出た。
鴻海(ホンハイ)精密工業(通称フォックスコン)。スマートフォンや液晶テレビといった電子機器の生産を請け負うEMS(電子機器受託製造サービス)の世界最大手だ。3月27日、シャープと資本業務提携し、“下請けがメーカーを救済する”という大立ち回りをしてみせた。
シャープは窮地のただ中にあった。液晶ディスプレーと太陽電池の不調で、過去最悪の最終赤字2900億円(12年3月期見通し)に転落。稼働率低迷に伴う液晶工場の減損リスク、巨額の社債償還も控えていた。近く企業存続すら危うくなる、とささやかれる中、シャープは1年半前から始まった鴻海の提携提案をのんだ。3月中旬の電撃社長交代でも下げたシャープ株は、提携発表翌日にストップ高。市場も鴻海を救世主と認めた。
だが、鴻海にとって今回の提携は、壮大な計画の第一歩にすぎない。郭台銘(テリー・ゴウ)董事長(注:会長の意)は、自らが描く怒濤の成長戦略に、シャープを巻き込もうとしているのだ。
どの家庭にもある「鴻海製品」
鴻海という名を知る人の多くは、中国・深センの巨大工場でアイフォーン、アイパッドを量産する“アップルの下請け企業”として記憶していることだろう。ただ、その姿は、氷山のほんの一角にすぎない。
「まるで秘密工場だ」--。広東省佛山にある鴻海の工場を訪れたある電機業界関係者は、その“異様さ”に驚いた。工場建屋に入り、ミーティングを行う会議室と生産ラインの間を歩いたところ、扉や窓など開口部が極端に少ないのだ。