シャープを救った台湾企業、鴻海(ホンハイ) サムスン潰しへの野望

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当然ながら、膨大な液晶需要がどこにあるかという疑問が湧く。現状では、堺の既存ラインですら、稼働率は5割を切っているのだ。

どうやら鴻海は、現在の最大顧客であるアップル向けの事業拡大を念頭に置いているらしい。先月発売された新型アイパッドは、今後さらなる量産に入る。さらに、業界で長らくささやかれ続けている、大画面にiOSを搭載した「iTV」が登場する可能性も高まってきた。こうした技術要求の高い大口需要向けに、高精細・低電力消費の性能に長けたシャープ製の液晶を提供しようというのが、鴻海のもくろみなのだ。

郭董事長は、さらに貪欲だ。この機に、遺恨のライバル・韓国サムスン電子を追い落とすべく、“アンチ・サムスン”メーカーの液晶需要も束ねてしまおうというのだ。

鴻海にとって、サムスンはもともと顧客の一社だった。だが10年末、関係を決定的に壊す事件が起こる。鴻海が買収した液晶パネルメーカー・奇美電子が価格カルテルで欧州連合(EU)から業界最大の課徴金を課されたのに対し、カルテル情報を積極的に調査当局に流したサムスンは課徴金を全額免除されたのだ。この屈辱に、最大顧客アップルとサムスンとの対立という代理戦争の色彩も相まって、郭董事長は猛烈な反サムスンの姿勢を打ち出している。

「シャープの液晶を使って、鴻海でテレビを組み立てれば、サムスンとの価格競争に絶対勝てる」--。シャープとの提携成立に合わせて3月下旬に訪日した郭董事長は、その足でパナソニックの経営陣も訪問し、こうかき口説いたようだ。

鴻海は既存顧客に、ソニーや米ビジオといったサムスンの競合大手も抱える。鴻海が仕掛ける液晶最終戦争。液晶・テレビ最大手のサムスンを後発から潰す気概である。その余波は、あらゆる液晶関連の部材、装置メーカーに及ぶ。4月に誕生した液晶会社・ジャパンディスプレイ(東芝、ソニー、日立製作所、産業革新機構の合弁)にとっても、鴻海の影から逃れようはない。

 

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