シャープを救った台湾企業、鴻海(ホンハイ)

サムスン潰しへの野望

 

労務費格差の存在に気づいた台湾の実業家は山ほどいるが、「何でも引き受けてやる」と考えたのは郭董事長だけだったようだ。おそらく、ほかの実業家は米国で電子技術を学ぶなど、専門技術の背景が多少なりともあったが、彼にはそれが欠けていた。だからこそ、無謀な挑戦もできたのだろう。

そこからの郭董事長は早かった。米国に飛ぶと、自らレンタカーのハンドルを握り、1泊12ドルのモーテルに泊まりながら顧客を訪ねて回った。門前払いも多かったが、少しでも脈がありそうな相手には、「もうラインを用意しました。いつでも発注してください」と大胆に出ることも忘れなかった。しだいに、インテル、デル、コンパックといった大手ITメーカーとの関係を深めていく。

「一言で表現するなら、すばらしいセールスマン」。郭董事長をよく知る人は、彼をこう評する。「英語はブロークンで決してうまくはないが、相手の立場を念頭に置き、気をそらさない軽妙なやり取りをする」。この長所は、米国での飛び込み営業で培われたといえそうだ。

郭董事長は、資金調達でも、国内を早々に見切った。すでに00年ごろには、米国大手商業銀行がメイン行となった。米国IT大手がずらり並ぶ顧客名簿が、台湾の新興企業に信用を与えた。その後の相次ぐM&Aに際しては、海外で積極的な増資や社債発行を行った。現在、株主には外国人投資家が名を連ねる。

シャープは「通過点」 狙いはサムスン潰し

今回、EMSの枠を超えてシャープの経営にも食い込んだ鴻海。その青写真は“常識”の外にある。

堺工場に新たにもう1本、新しい液晶生産ラインを増設する。さらに、ブラジルにもシャープと共同で、液晶パネル工場を立ち上げる──。

 

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